2025年5月17日土曜日

令和7年新指定国宝・重文展(清涼寺如意輪観音)


京都の旅行の日程に新指定国宝・重文展を組み込むこととなりあらためて出展目録を見ると東博で開催されていたのと同じく一部の写真パネルの仏像を除いて、ほぼ全部の仏像がここ京都文化博物館に集結していた。3月発表の時から注目していたのがこの清涼寺如意輪観音だ。これまで鑑賞者を驚かせるような作風の仏像がかならず混じっているのが国宝・重文展の魅力だが高野山の深沙大将しかり奈良生駒寶山寺の制吒迦童子にもぐっと来た。今年のぐっと来る仏像は清涼寺如意輪観音だ。等身の如意輪観音で清涼寺の前身寺院・棲霞寺の遺構である阿弥陀堂に伝来した。六臂で右膝を立てて座る姿であらわされる。ヒノキの一木造で、奥行きの深い側面観に彫刻としての存在感があり、張りのある肉身部の表現や多臂の複雑な像容を破綻なくまとめあげる点等には仏師の力量がうかがえる。私がこの仏像を初めて見たとき、その特徴的なお顔に圧倒された。目がうつろでこちらを向いているような、なんとも不思議な表情をしている。図録解説では髻を高く結い上げ、その毛筋を細かく刻み柔らかみをもたせてあらわす点や、下膨れの顔の輪郭、大径木を用いて頭体の主要部分を一材から彫出す造法から制作年代は十世紀前半に置かれる。施主博物館醍醐天皇第四皇子・重明親王で、妻の一周忌法要を棲霞寺でおこなわれた記述があり関与した可能性があるとのこと。古寺に残る仏像にスポットライトあたった瞬間を目の当りにし、博物館の図録を購入し会場を後にした。






0 件のコメント:

コメントを投稿