2015年2月28日土曜日

みちのくの仏像展③成島毘沙門堂の吉祥天

今回の「みちのくの仏像展」で多くの仏像と再会をはたすが、この岩手県成島毘沙門堂の吉祥天にも6年ぶりに会うことができた。平成21年に毘沙門堂を訪問した際はただただ兜跋(とばつ)毘沙門天の大きさに圧倒されて、脇侍の吉祥天が印象にのこらならかった。その後、2012年に発売された別冊太陽「みちのくの仏像」の表紙をこの吉祥天が飾り、がぜん注目するようになった。今回会場のほぼ中央に静かに立っている吉祥天と対峙したが、あらためて美しいと感じた。頭冠に二頭の象を乗せている姿は他の吉祥天にはなく、本当の尊名は不詳とのことだ。だが、名前などどうでもよかった。彩色が落ち、薄オレンジの木目が鮮やかに浮き出たその仏像は、見るもの目をおだやかに引きつけていた。腰周りは少し太めで、胸をあらわにはだけているのだが、なぜかエロティックさが抑えられている優しく閉じた目から受ける印象も、不思議に官能から遠い。私は会場を回りながら、何度も吉祥天の前に戻りあくことなく眺めていた。

2015年2月21日土曜日

円空・木喰展②真教寺の十一面観音

円空・木喰展会場では円空のごく初期の仏像から晩年の仏像まで展示されていた。円空は最初から木端仏(こっぱぶつ)のような前衛的な仏像を製作したわけではない。会場を入ってすぐに展示されていたこの十一面観音は円空が奈良遊学の折に見かけた法隆寺の百済観音や救世観音から学んで製作したといわれている。両手首から天衣を垂らした姿はまるで百済観音のようだ。立っている蓮の台座が両足に分かれていて「仏が歩いた先に蓮の花がさく。」という東博の菩薩像にも似た十一面観音だった。蝦夷地やみちのくに向う前に製作されたたいへん貴重な仏像だった。二メートル以上ある大きな仏像をいつまでも眺めていた。

2015年2月14日土曜日

みちのくの仏像展②(天台寺の聖観音)

今回の「みちのくの仏像展」でお会いしたかったのが、岩手にある天台寺の聖
観音だ。「鉈彫り(なたぼり)」の名品として有名な仏像だ。天台寺は岩手県二戸市にある古刹で僧籍にあり作家の今東光氏や瀬戸内寂聴氏が住職を勤めた古寺。有名作家が住職をつとめたほど、ここにある7体の仏像が多くの人をひきつけるほど魅力的だということか。今回の展覧会では聖観音のほか如来立像も出展されている。会場に入ってまず最初にガラスケースにある聖観音に釘付けになった。荒々しい横目の鑿後(のみあと)が残る技法は昨年春拝観した弘明寺の十一面観音にも用いられており、美術史家の井上正氏によれば聖観音が変化する際おこすさざ波を表現したものだという。変化した後の天台寺所蔵の十一面観音と一緒に見たかったが、残念であった。天台寺の聖観音はあとでゆっくりもう一度見るとして、次の展示に向った。

2015年2月10日火曜日

円空・木喰展①

みちのくの仏像展を見終わって解散したあと、U案内人と連れ立って横浜そごう
で本日より開催される「円空・木喰展」に向った。以前、東博で「飛騨の円空展」を見てから円空の虜になっていたが、今回は全国の円空・木喰の仏像250点が一同に展覧される首都圏初の展覧会とのこと。期待が高まる。入り口を入って出迎えてくれたのが、円空仏で、高さ2メートル以上の十一面観音であった。円空が奈良遊学の折に出会った法隆寺の百済観音や救世観音にヒントを得て製作した仏像だ。さらに進むと「見仏記」でみうらじゅん氏がためいきをついた1メートル以上の龍泉寺の馬頭観音が天照大神と熱田大明神とともに展示されていた。円空得意の木端仏(こっぱぶつ)や邪鬼を踏む毘沙門天など次々と現れ、円空ワールドに引き込まれる仕組みとなっている。後半は木喰の微笑仏のコーナーで有名な子安観音や珍しい乗り物の象も描かれている普賢菩薩などが展示されていた。展示会場の終盤には微笑みをたたえた多くの木喰仏が現れこころ和ませる。そのうち本展覧会の監修者である小島先生によるスペシャルギャラリートークが始まり、最初に戻って説明を聞いた。円空仏の素晴らしさや決して円空に影響されたのではない木喰のユニークな微笑仏について熱く語られた。ほどよい疲れを感じてU案内人と会場をあとにした。

2015年2月7日土曜日

みちのくの仏像展①

本日、上野東博で開催中の「特別展みちのくの仏像」に仏像クラブの面々で出
かけた。みちのくの仏像には平成20年の福島、平成21年の岩手、平成25年の福島・宮城・山形の旅で多くの仏と出会った。今回の展示品にもなつかしい仏像や初めて出会う仏が出展されており、東京上野に一同に会する。本館特別5室入り口を入るとすぐにガラスケースのなかに天台寺の聖観音が展示してあった。鉈(なた)彫りがすばらしく、うっとりした。すぐ近くには夏の暑い山形で出会った吉祥院の千手観音ほか3体がすっきりしたお顔でたっていた。中央に進むと、福島会津勝常寺・岩手黒石寺・宮城双林寺の3薬師のコーナーで特に会津の薬師如来がさすが国宝だけあり堂々たる体躯で迫ってきた。最後のコーナーは山形本山慈恩寺で出会った十二神将が4体来ており、慶派の迫力に圧倒された。後ろを振り返ると東日本大震災の津波でも助かった宮城石巻の追分浜観音堂の3メートル近い大きな十一面観音が立っており圧倒された。仏像クラブの面々も大満足だったみたいで、駅前の食堂で大いに語り合った。その後U案内人と一緒に私は横浜そごうで開催される「円空・木喰展」に向った。