2014年4月26日土曜日

観音の里の祈りとくらし展④(善隆寺和倉堂の十一面観音)

私が近江の観音めぐりをするきっかけとなったのが、滋賀県観光協会の「神
仏います近江」というWEBサイトだった。近江の仏像の写真がたくさん載っており、その中で私が憧れたのが、善隆寺和倉堂の十一面観音だ。像高1メートル小さめな仏像だが、写真では大きく見えた。この仏像がある和倉堂は長浜市西浅井にあり、冬には豪雪に見舞われる地域だという。端正な顔立ち、均整のとれたプロポーション、整然と等間隔・同心円に配置された衣文線により、体の奥行感があるにもかかわらず、軽やかさすら感じさせる。ガラスケース越しだったが、私は飽くことなく十一面観音を見つめていた。

2014年4月19日土曜日

観音の里祈りとくらし展③(大浦腹帯観音)

今回の展覧会でひときは異彩を放っていたのが、この大浦腹帯観音だ。平
安時代の作だが、なんといっても腹の安産祈願の帯が特徴的だ。調べてみると地域の妊婦さんたちが、丈夫なこどもが産まれますようにと願って腹帯をまいたという。像高150センチ余と大きく、写真集で見るより綺麗なお顔の観音様で宝冠が見事だ。皇室ともゆかりがあり、美智子皇后や雅子皇太子妃出産のおり腹帯を送って感謝状をいただいたとのこと。その後盗難にあうなどしたが無事見つかり今にいたっている。普段は北近江の大浦の集落にひっそりとまつらているが、この展覧会のためにわざわざお出ましになった。私はあくことなく観音さまをながめていた。

2014年4月13日日曜日

厚木金剛寺の阿弥陀如来

先週の日曜日桜満開の厚木市飯山観音の近くにある金剛寺で阿弥陀如来
のご開帳があり、仏像クラブで出かけた。先に飯山観音に参拝したが、坂東三十三札所でもここではご開帳はなく、本尊は絶対秘仏のため見られなかった。でも高台の境内から眺める桜はすばらしく、祭りでにぎわう境内を抜け静かな金剛寺に向った。入り口にはボランティアガイドの方がおり説明いただいた。収蔵庫に守られた国重要文化財の本尊阿弥陀如来が半分開けられた扉から見えた。文化庁の方針を厳格に守っているため、扉が半分しか開けられないそうだ。阿弥陀如来は像高139.3センチで資料の写真よりどっしりとおちついた感じの定朝様式の仏像だ。室町時代から江戸時代にかけてたびたび修復が施されているが、像様に変化はなく平安時代後期の仏像様式を今に伝えていた。金剛寺には鎌倉時代に製作された地蔵菩薩もあり、観光の寺ではないので中に入って拝むことはできなかったが、ガラス窓越しに拝むことはできた。仏像クラブの面々もいつもより静か目に拝観した。余計な雑音がないためより仏像と深く向き合えた。ボランティアガイドの方にあいさつして静かに寺をあとにした仏像クラブの面々だった。

2014年4月5日土曜日

観音の里の祈りとくらし展②(丁野観音堂の十一面観音)

今回の「観音の里の祈りとくらし展」で1番印象に残ったのが岡本神社に隣
接する丁野(ようの)観音堂の十一面観音だ。全国的にも珍しい6臂(ろっぴ)の坐像の観音で平安時代の作。岡本神社は長浜市小谷にあり、あの戦国大名浅井長政の居城があったところからほど近い。観音像の背中の大きな割れは織田と浅井・朝倉連合軍が激突した姉川の合戦のおり、村人が避難させた際誤って落としたときできたという。像高は1メートルあまりと坐像としては大きく、髻を結い炎髪の忿怒相を表す頂上面と頭上面十面を配する。図録によると観音堂は住職を置かないため、「宮世話」と呼ばれる村人の組織が観音様を守っている。まさに今回の展覧会のテーマにふさわしい観音様だ。浅井の旧臣という気概をもって村人が交代に守っているという。穏やかで端正な顔立ちがその歴史を感じさせる仏像だった。