2015年7月26日日曜日

国宝薬師寺展の思い出

仏像クラブが発足したのが、平成19年12月だが、平成20年の4月にはU案内人
と京都に行き、その翌月に東博で開催されたのが、「国宝薬師寺展」だ。この展覧会では、薬師如来の脇侍日光・月光菩薩が揃って寺外初公開されると聞き二人で出かけた。会場の当時の記憶はほとんどないので、当時の東博ニュースを読むと、「今回の展示では光背を付けず、日光・月光両菩薩像を離して展示することでそれぞれ360度の視野を確保します。また、両像を少し高い位置からご覧いただけるよう、檀を設置します。」とある。会場は特別展がよく開催される平成館で、他の展覧会でも劇的な視覚効果を発揮したあのスロープを使ってお二方を見るしかけとなっていた。今でも印象に残っていたのは、普段光背で隠れている、背中にも彫刻が施されたことに感動した点だ。照明もこのころから工夫していたのには驚いた。現在、奈良博では「白鳳」という展覧会が開催されているが、月光菩薩のみの展示とのこと。お二人そろって東京で見られた貴重な展覧会であった。

2015年7月19日日曜日

インドの仏展⑦魔利支天

インドの仏の会場でひときわ異彩を放っているのが魔利支天像だ。陽炎を神格
化したこの天は日本にはあまり作例がなく、この仏像がはじめてみる魔利支天だ。若いころ南アルプスの甲斐駒ケ岳に登ったとき、支峰の名前が魔利支天だったがたしかに陽炎のように霧の中に浮かんでいる光景を思い出した。本像は4つの顔をと8本の腕を持つ姿で表されている。インドの仏展の会場では、真後ろの顔もよく鑑賞できるように後ろの壁が空洞になっており作品を楽しむことができる。ウェブのニュースによると会場で若い女性を中心に人気なのがこの魔利支天像だという。実際はおそろしげな像で、腕には金剛杵、矢、象を操る突き棒、悪人の口と目を縫い合わせる針と糸を持つ。特異で魅力的な像に心奪われて会場をあとにした。

2015年7月11日土曜日

九州仏⑧長安寺の太郎天及び二童子

九州仏探訪の初日の大分国東半島はあいにくの雨だった。無動寺を出たころか
ら雨が激しくなり、タクシーを予約して正解だった。次に向ったのが長安寺だ。雨にもかかわらず多くの参拝者がいらした。長安寺は花の寺として有名で、しゃくなげが見ごろだったためとうなずける。運転手も私が仏像目当てだということを心得ていて、お寺の方に収蔵庫を開けてもらうように頼んでくれた。収蔵庫の中には平安時代の太郎天及び二童子がおられた。太郎天は不動明王の化身で右が制吨迦童子、左が矜羯羅童子か。彫りは浅いが、太郎天像は厳かな雰囲気があり、二童子は愛嬌がある。三像とも榧の木の一木造で、太郎天像のみ内刳が施されている。ここは午前中にいった天念寺も管理しており「鬼会の里」の鬼のお守りがあったので購入しお寺をあとにした。

2015年7月4日土曜日

インドの仏展⑥カサルバナ観音

インドの仏展最後のコーナーである「密教の世界」は再び表慶館の1階に下りた
ところにあった。会場の中央に仏足石があり像高50センチから1メートルの仏がずらりと取り囲んでいた。中でもすばらしかったのが、インドの隣国バングラデシュの遺跡から発掘された、カサルバナ観音立像だ。カサルバナとは「空中を遊行するもの」の意味で、多様化した観音のひとつ。中央の観音は日本でもよく見かける右手に与願印を結び、左手に蓮の花をもっている。左脇にはお馴染みの善財童子や頭上には大日如来・宝生如来・阿弥陀如来・阿閦(あしゅく)如来・不空成就如来の五仏を配する。大変手の込んだ彫刻に舌を巻いた。時間の無い中ゆっくりと鑑賞して、グッズのコーナーに売っていたカサルバナ観音のクリアファイルを購入して会場をあとにした。