2017年8月26日土曜日

信州仏像巡り④(中善寺の薬師如来)

信州二日目は別所温泉にある国宝八角三重塔を観光し、塩田平を歩きとバス
で観光する予定だった。信州はこの日も朝から猛暑で行けどもお寺にには到着せず、頼みの「信州の鎌倉シャトルバス」も来る気配もなく塩田平交流センター「独鈷館」を見つけたので暑さから逃げるように中に入った。案内の方が親切にタクシーを呼んでくれて、上田駅に向かう前に中善寺に立ち寄れた。中善寺は塩田平の南側に峩々とした山容を見せる独鈷山の山麓にある。中善寺薬師堂は美しい阿弥陀堂形式の建物で、建物の屋根をそのままふきあげ、てっぺんに宝珠をのせる四角な台を乗せた「宝形造り」の屋根を冠した薬師堂の中に寄木造りの薬師如来がおられた。「独鈷館」で購入した塩田平のガイドによると「四天柱」という薬師堂の内部の4本の柱に囲まれて薬師如来がおられる珍しい形式の堂内となっている。円満な顔立ち、抑揚を抑えた体躯、整った衣文など、平安後期の定朝様の特徴を示している。ゆっくり拝観していたかったが、タクシーを待たせており、午後にお寺2か所を巡る予定なので早めにタクシーに戻り上田駅へと向かった。

2017年8月19日土曜日

信州仏像巡り③(清水寺の地蔵菩薩)

前回の善光寺御開帳時に長野県信濃美術館で開かれた「”いのり”のかたち」
展では多くの長野の仏像が展示されていたが、そのころは信州の仏像の素晴らしさに目覚めてなかったので、行かなかった。その後信州の仏像の写真集を見つけてそのレベルの高さに驚き、今回の訪問となった。今回紹介する地蔵菩薩は、「”いのり”のかたち」展には出展されていなかったがSNSで写真が載っており注目した仏像のひとつだ。地蔵菩薩は千手観音と同じく平安時代初期に製作された像高157センチの一木造りの仏像だ。お寺の方とも話したが、斜め横から表情が素晴らしくうっとりした。いかにも堂々たる量感、動きのある像容、そして彫り強い衣文の特色が見受けられる。正面の裳を大きな波の間に小波を二条はさむ、複雑な翻波式衣文で飾り、胸の肉身部と鮮やかなコントラストをみせている。お寺の方の説明によると平安時代の地蔵菩薩としては錫杖を握るお姿は珍しいとのこと。このお姿は鎌倉でよく見られる鎌倉時代の特色であり、鎌倉時代以前は右手をそっと垂らししている姿だった。清水寺の地蔵菩薩は右手に錫杖を握っており、造像当時から錫杖を持ったお姿であった可能性が高く、錫杖を持った地蔵菩薩像として、日本最古の像と云われている。清水寺にはこのような驚くべき仏像が人知れず祀られていたのに驚かされ、地蔵菩薩の前で動けなくなった。



2017年8月11日金曜日

信州仏像巡り②大法寺の十一面観音

今日は信州仏像巡りの最終日。急いで昼食を済ませ青木村行きのバスに乗り
込み。一路大法寺を目指した。停留所からかなり歩いて本堂に着くと三重塔に行くように指示があり塔の近くの観音堂に向かう。観音堂の立派な厨子は観音の像高に会わないため後ろに安置されていた。顔は卵型であごにかけて柔らかい丸みは魅力的だ。少し眠そうな目をしているのに親近感がわき見入ってしまった。かの白洲正子もここのお寺を訪れておりエッセイで「穏やかなお顔が地蔵様に似ているのは、地蔵と十一面を一体ともなす思想の現れであろう。材は桂で、台座に木の根の部分を使ってあるのも、立木観音の伝統を踏襲していることに気がつく」と書き残している。脇侍は普賢と文殊で立像のため獅子や象はつかない。多分他の寺からの客仏だろう。帰りのバスの時間もあるのでそうそうに切り上げ最後の寺に向かった

2017年8月10日木曜日

信州仏像巡り①(清水寺の千手観音)

今日から信州の仏像巡りに出かけている。長野についてまず最初に訪れたのは、松代の清水寺だ。此処は知る人ぞ知る貞観仏の宝庫で、重要文化財の仏像が、三体もあるお寺だ。信州に来ていきなりクライマックスのお寺を訪ねることになるのだが、メインの3体がすばらしいので3回に分けて報告する。お寺の方に収蔵庫を開けてもらい中に入ると中央に千手観音、左に地蔵菩薩右に聖観音が祀られいた。千手観音は頂に如来相、その周囲、天冠台の上に十一面をいただき、手が四十二本、頭部を比較的小さめにつくり、179センチの像容の肉どりをいかにも端正にまとめている。自宅に双眼鏡を置いてきたので十一面のひとつづつをじっくり見れないのが残念だったが、近くから拝せるのでその迫力は十分に伝わった。仏女新聞にも書かれておりこの千手観音の金箔の貼り方に注目している。製作は九世紀の頃で、信州における現存する最古の木造であり、一木造りの仏像では東日本で最も古いほとけさまとお寺の方は言っていた。さい先よくいい仏像に出会えて明日の期待が高まるそんなお寺だった。

2017年8月9日水曜日

特別展タイ~仏の国の輝き~②ナーガ上の仏陀

特別展タイ九州展開催の頃からタイ仏像大使のみうらじゅん・いとうせいこ
う氏が騒いでいたのが12世紀にタイ南部伝来の「ナーガ上の仏陀」だ。展覧会場でもいきなり最初に展示されており、圧倒された。よく見るると鼻筋が通っている「イケ仏」で端正な顔立ちと穏やかな微笑みにタイ観光大使の乃木坂46がうっとりするのもわかる。この「ナーガ上の仏陀」はアユタヤより古い「シュリーヴィジャヤ美術」の流れをくむ仏像でその完成度が高いのには驚かされる。瞑想する仏陀を雨風から守る蛇の神ナーガの題材は東南アジアでよく見かけるが、日本の大乗仏教の仏像ではあまり見かけないので、いかにも南国らしさを感じいっきにタイの世界観に引き寄せられる展示品だ。露出展示で360鑑賞できるので後ろに回ると、7つの顔を持つ大蛇の尻尾はひとつのところも興味がわいた。帰りのグッズ販売コーナーでクリアファイルが売っていたので購入した。何度でも見に行きたくなるような仏像だった。

2017年8月5日土曜日

福島いわき仏像巡り:後編

東北出身の会員より何年も前から、白水阿弥陀堂への訪問を提案いただいた
が、遠いことなどを理由に実現には至らなかったが、常磐線の品川駅開通や仏像クラブ発足10周年記念など環境が整い、実現の運びとなった。いわきの北部にある薬王寺からいわき市街地を通らないバイパスで一路白水阿弥陀堂に向かう。阿弥陀堂に着くとそこは池に囲まれた公園になっており、東日本大震災をきっかけに原発事故などにより遠のいた観光客をなんとか取り戻そうとしている福島の人々の願いが込められているのを感じた。京都の平等院・浄瑠璃寺・法界寺、大分の富貴寺、平泉の中尊寺や宮城の高蔵寺など多くの国宝阿弥陀堂で定朝風阿弥陀如来見てきたが、ここ白水阿弥陀堂も奥州藤原二代基衡の娘徳姫が亡き夫の冥福を祈って、故郷平泉の金色堂に模して創建したと伝えられている。「白水」は「平泉」の「泉」より取ったと説明の僧侶の話にあった。正面に平安時代後期の定朝風の阿弥陀三尊と前方に二天像を安置している。向かって右側の持国天の鼻筋が通っているのが印象に残った。おりしも浄土庭園の池には、ハスの花が咲き始めており帰り際にそれを鑑賞してからタクシーに戻った。湯本の寿司屋で昼食をとり、本日のいわきの仏像巡りについて熱く語る仏像クラブの面々だった。