2016年7月31日日曜日

観音の里の祈りとくらし展Ⅱ③(黒田観音堂の千手観音)

前回の「観音の里の祈りとくらし展」のプロモーションビデオで会場やHP上でみ
かけた「黒田観音堂」の千手観音に会いたかったが、Ⅱでは上野の芸大美術館にやってくるとの発表があり仏像クラブの年間計画に組み込んで芸大美術館に向かった次第だ。興福寺仏頭展も開催された芸大美術館の1番大きな展示会場の奥に観音様は展示されていた。見逃しそうになっていたU案内人も呼んで一緒に鑑賞した。像高2メートルの大きな観音様で右に九本、左に九本の18臂の仏像から准胝(じゅんてい)観音という説があるという。ヒノキの一木造りで中央の3手が説法印を組むほか、15手が水瓶(すいびょう)や宝剣などをお持ちになっている。会場では判らなかったが、引き締まった口元には、うっすらと紅がのこっている。地下の会場ではモデルのはなさんが「黒田観音堂」を訪ねるプロモーションビデオをやっていたようだが見逃してしまった。滋賀県のアンテナショップで買った雑誌にはお世話をする土地の人の話として、「堂々としてふくよかで、男性のような包容力を感じます」とのこと。男性のような包容力と女性らしい姿をあわせもつ千手観音だった。

2016年7月23日土曜日

観音の里の祈りとくらし展Ⅱ②医王寺の十一面観音

今回の展覧会で1番会いたかったのが医王寺の十一面観音だ。「TV見仏記」で
も紹介され、いとうせいこう氏が「なんてやさしい顔だちなんだろう」と感嘆の声をあげているのが印象的だ。会場では十一面が邪魔でよく解らなかったが、頭上に半球状の髻(もとどり)をふたつ結い頂上面をいただいている。左手は水瓶を持ち右手を垂下し、「ほぼ直立の姿」で立っている。この仏像は数奇な運命によりこの長浜市大見地区にもたれされた。明治20年に住職が長浜の古物商より購入し村に持ち帰ったという。小説家の井上靖が医王寺を足しげく通い、「星と祭」では、清純な乙女の姿をモデルにした観音さまとして紹介されている。当初は薬師堂に安置されていたが、観音堂を寄進する人があり、そこへ写しお祀りするようになったという。今では大見地区の選挙で選ばれた3軒の世話方がお守りしているというから、地区の人に歓迎されていることが判るエピソードだ。この展覧会で入場者全員に配布されるクリアファイルの表紙にもなっているメインの仏像だ。私はあきることなく観音様を見上げていたが、他の展示物も気になるのでその場をあとにした。

2016年7月16日土曜日

観音の里の祈りとくらし展Ⅱ①

先週の土曜日、仏像クラブで芸大美術館で開催されている「観音の里の祈りとく
らし展Ⅱ」を見に行った。この展覧会は滋賀県長浜に平安時代から伝わる観音菩薩をはじめとする多くの仏像48点が展示される長浜市役所主催の展覧会だ。会場は興福寺仏頭展と同じで、広い空間に仏像が並ぶ様は壮観だ。入口の近くにはTV見仏記でみうらじゅん・いとうせいこう氏をうならせた医王寺の十一面観音があり奥には井上靖が村の娘さんと小説のなかで書いた石道寺の十一面観音を守る持国天・多聞天が控えており、奥のコーナーにはこの展覧会のポスターになっている黒田観音堂の千手観音が控えていた。変り種としてはみうらじゅん氏を夢中にさせた千手千足観音などの展示もあり、長浜の仏像が大集合していた。なかには秘仏でふだん見れない仏像もあり興味深かった。地下の講堂でギャラリートークが始まるとのこで聞きスライドなどを交えてわかり安い説明と村人の観音に対する信仰の厚さにふれたおもいだった。会場を出て、びわ湖長浜KANNON HOUSEに向かいそこでも観音を鑑賞した。帰りに上野の飲食店によりおいしい食事とお酒を楽しみながら観音について語り合う仏像クラブの面々だった。

2016年7月9日土曜日

ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像ー

今週の日曜日梅雨の晴れ間の猛暑日の中、東博に特別展「ほほえみの御仏ー
二つの半跏思惟像ー」を見に行った。日韓国交樹立50周年記念の展覧会で5月に韓国ソウルの国立中央博物館で開催されたあと、6月から東博で開催されている展覧会だ。展覧会には日本からあの剛力彩芽が涙した中宮寺の菩薩半跏像が、韓国からは国宝78号半跏思惟像が出展された。韓国の仏像を見るのは初めてだったが、国宝78号半跏思惟像は頭に日月の宝冠をかぶった高さ83センチ余の金銅仏だがやわらかい腰つきをしており頬にそっと手をそえる姿勢がすばらしく美しい。この像は内部に土を込めた技法で出来ており胴の厚さは5ミリでしかないとのこと。この薄さが柔らかい木彫像のような金銅仏をつくりあげた秘密だろう。中宮寺の菩薩半跏像は目の輪郭を描かない特徴があるがこの国宝78号半跏思惟像も薄目をあけた表現になっており似ている。韓国には見仏記海外編に出てきた金銅三山冠半跏思惟像があるがこちらは京都広隆寺の弥勒菩薩に似ており、二組の仏像の共通性に韓国と日本のつながりが感じられる。残念ながらもうひとつの半跏思惟像は出展されなかったが、見仏記海外編をたよりに韓国仏像めぐりをしたいものだ。平常展示の11室の仏像を見てから東博をあとにした。

2016年7月2日土曜日

「仏像半島-房総の美しき仏たち-」展④

平成25年4月に千葉市美術館で開催された「仏像半島-房総の美しき仏たち-」
展のパンフレットに載っていたのが千葉県富津市の東明寺から出展された薬師如来と十二神将だ。近頃せんとくんの生みの親藪内芸大教授の「仏像風土記」でも紹介されていたが本尊は平安時代後期、十二神将は鎌倉時代の製作で、細かい螺髪や丸みを帯びた輪郭など平安時代末の様式を持っているが、カヤ材一木造の地方色豊かでおおらかな顔つきは、平安時代前期の名残を感じさせる。この展覧会を通じて千葉独自のオリジナルティがある仏像が多いと感じたが、都の仏像のデザインが時差をもって伝播し、前代の様式と折衷されている作例が多く見られるとのこと。十二神将も後世の彩色が施されているが、独自のポーズがうまくまとめられており、中央の正統な仏師の手になるものとのこと。機会があればお寺を訪問したいと思った。