2019年4月30日火曜日

平成31年国宝・重文展①

仏像クラブで東寺展鑑賞後、最後に向かったのが「平成31年国宝・重文展」
だ。仏像は例年の通り本館11室に展示されているので、14室の「密教彫刻の世界」鑑賞後移動した。今年は京都国立博物館に寄託されている安祥寺の五智如来のうち3体(大日如来、阿弥陀如来、不空成就如来)が展示されていた。文化庁の解説から平安前期の仁寿から貞観のころの製作という。いわゆる貞観仏で神護寺の薬師如来と同時期の製作となるが、特徴である近寄りがたい怖さは感じられず、とても穏やかな密教仏だ。安祥寺は皇后藤原順子の寄進により創建、伽藍が整備され、今は荒廃した上寺に収められていたのがこの五智如来だ。女性の寄進により製作された仏像なので穏やかな顔つきをしているのであろう。そのほかに唐招提寺から薬師と獅子吼(ししく)菩薩はきていたが一緒に国宝に指定された衆宝王菩薩や増長天は来なかった。重文では見仏記でおなじみに香薬師寺おたま地蔵も景清地蔵とともに展示されていた。詳しくは次回紹介したいと思う。東寺展・密教彫刻の世界・国宝・重文展と非常に充実した展示に満足し昼食によったそばやで大いに語り合った仏像クラブの面々だった。

2019年4月28日日曜日

特集密教彫刻の世界

平成館で東寺展を拝観したあとわれわれ仏像クラブ一行が向かったのが本館
14室に展示されている特集密教彫刻の世界だ。こちらでは東寺展の関連特集と位置付けられており、東博の館蔵品を中心に中国・日本・チッベットの仏像が展示されていた。VRシアターで見た「三蔵法師の十一面観音」でおなじみの多武峰伝来の中国唐時代の十一面観音から東寺の大日如来の鎌倉時代の姿を模した運慶の光得寺大日如来などが展示されていた。U案内人が見過ごしそうになるのを呼び止めて鑑賞した、チベットの仏像も展示されていた。平成29年に東洋館で見た「特集チベットの仏像と密教の世界」の出展品の一部が展示されていた。チャクラサンヴァラ父母仏立像は男女抱擁する姿の仏像で父母仏の代表的な作品のひとつだ。インドにおける女神信仰の高まりを受け、仏に配偶者を考え出したことにより父母仏が造られるようになった。守護尊が妃と交わることで曼荼羅の世界を構成する仏たちを生み出すと考えられていた。小冊子「東博ニュース」で学芸員は「壮大な密教仏の世界をご体感いただければ幸いです。」と結んでいる。密教仏の世界を堪能し次の11室での「国宝・重文展」に向かった。

2019年4月21日日曜日

特別展 国宝東寺①

本日(20日)仏像クラブで現在上野の東博で開催中の特別展「国宝東寺」を
鑑賞しに出かけた。平成23年にも東博では「空海と密教美術」展が開催されたが、今回は副題に「空海と仏像曼荼羅」とあるように空海の思想に寄った展示となっている。それをもっともよく表しているのが第一章「空海と御七日御修法(ごひちにちみしほ)」で宮中で空海が行った国家安泰を祈る修法を再現したところだろう。次の曼荼羅のコーナでは保存状態のよい西院曼荼羅は26日からなので、恵果阿闍梨から空海に授けられた曼荼羅の2回目の複写本が展示されていた。平成になりかなり修復したあとが見られ痛みは激しいが何とか両界曼荼羅の大日如来の姿が確認できた。第三章「東寺と信仰の歴史」のコーナーからがぜん興味わく展示が並び、鎌倉時代の八部衆のお面や兜跋毘沙門天、U案内人がよかったと言った「西寺の地蔵菩薩」など東寺展ならではの展示が並んだ。最期の章はU案内人と訪れた東寺観智院で見た五大虚空蔵菩薩と空海の立体曼荼羅の世界だ。帝釈天は撮影OKとのことで多くのカメラマンに囲まれまるで今回購入したフィギュアと見間違えるようだった。今回の展覧会では平安時代の密教美術が中心だったので、金堂の桃山時代の日光・月光や十二神将が展示されていないのが残念だった。帰りにフェリシモおてらぶ製作の金剛杵ペンケースを購入して東博本館で関連展示されている「密教彫刻の世界」に向かった。

2019年4月14日日曜日

運慶展⑬(浄瑠璃寺の十二神将)

運慶展の最後を飾るのが浄瑠璃寺の十二神将だ。運慶展開催前に静嘉堂文庫より運慶没後の年号が入った墨書がみつかり問題となった仏像だ。十二神将との出会いは東博11室からであった。明治期に東博に5躯、静嘉堂文庫美術館に7躯分けて保管されるようになった。その後静嘉堂文庫美術館でも修理が終わった4躯の十二神将の展覧会が平成28年に開催され仏像クラブで見に行ったが、最後に残った亥神の頭部から問題の墨書が見つかった。展覧会場では70センチ強の像がひとつひとつガラスケースに収まり照明も当てられ十二神将すべてが揃う様は圧巻だった。図録では静嘉堂文庫の発表にも触れ、運慶の子息や周辺の慶派仏師の作との説明だが、運慶没後のわずか5年後であることから運慶が構想し定慶ら息子たちに造らせたとは考えられないだろうか。浄瑠璃寺の薬師如来の周囲に江戸時代までは並べらていたとのことで、いつか薬師如来と一緒に拝観できる日を夢見て展覧会場をあとにした。


2019年4月7日日曜日

快慶展⑩「青蓮院の兜跋毘沙門天」

兜跋毘沙門天と言えば現在東博で開催中の特別展「東寺」に出展されている
平安時代の仏像を思い起こさせるが、鎌倉時代に何と快慶の手でつくられたのがこの青蓮院の兜跋毘沙門天だ。宝冠をかぶり、外套状の金鎖甲を着け、二鬼を従えた地天女が両足を捧げ持つお馴染みのポーズで表されている。東寺像と違い瓔珞に銅製鍍金であらわされているのもこの像の特徴だ。図録で奈良博の山口氏によると細部まで神経のゆきとどいたまとまりのよい作風に快慶の特色がはっきりとあらわれているとのこと。昨年東博で開催された「大報恩寺展」で快慶と弟子行快の耳の形の違いについて学んだが、この青蓮院像でも毘沙門天と地天女に行快の彫り癖が表れているとのこと。このことからも快慶の一番弟子は行快ということに気づかされる作品だった。