2016年2月28日日曜日

比叡山展④(西教寺の観音菩薩)

今回の「比叡山展」で西教寺の阿弥陀三尊のうち観音菩薩が展示されていた。
快慶の一番弟子「行快」の作で像高60センチ足らずの仏像だ。行快といえば奈良博で見た大阪金剛寺の降三世明王や京博の大日如来、不動明王、大報恩寺釈迦如来などが有名だが、いずれも像高2メートルを超える巨像ばかりで、このような小さな仏像も作っていたとは意外だった。かたちを見ると極めて高い髻が特徴的で、その上部に大きな飾りをつけている。髻の飾りといえば運慶の兄弟子「実慶」の大日如来を思い出すが、この仏像も女性発願の像なのだろうか。つり目がちの目と小さな口によって理知的な表情をあらわしている。この仏像も行快の一番弟子としての力量をいかん無く発揮した仏像だ。いつか大津歴史博物館を再訪するとき事前予約して三尊すべてを見てみたいと思った。次の展示品を見にその場をあとにした。

2016年2月20日土曜日

平等寺の薬師如来

昨年京都で野鳥の会の阿弥陀三尊を見たあと、御池で遅めの昼食をとり向った
のが、平等寺だ。この寺は京都非公開文化財特別公開の常連だが、訪れるのは初めてだった。五条駅に近いので、多くの参拝客でごった返していたが、いつもの学生の案内人が要所要所にたち、見所を説明してくれた。最後にこの薬師如来の説明が外の収蔵庫のなかで行われた。細い目に小さな鼻と唇。女性的な優しさを見せる一木造の平安仏だ。頭に布をかけているのが特徴だが、お寺の説明だと、江戸時代のころからかかっていてそのままとのこと。思いのほか長居をしてしまったので、最後の東寺に向かうためにお寺をあとにした。

2016年2月13日土曜日

水ー神秘のかたち展②(長快の十一面観音)

水ー神秘のかたち展では水にかかわる神仏が展示されている。快慶の弟子「長
快」の十一面観音は今わ無き快慶作の長谷寺十一面観音の姿を今に伝えている。長谷寺の観音は川から流れてきた霊木を観音として彫った「流木造像譚」が伝えられており、水にかかわる神仏のひとつだ。快慶の弟子には大報恩寺の釈迦如来や大阪金剛寺の不動明王・降三世明王を造った行快が有名だが、「長快」の作品は今回はじめてみる。行快ほどの大胆さはないが、師快慶の様式を忠実に守る愚直な弟子のようだ。他の作品もあるので先に進んだ。

2016年2月6日土曜日

四国遍路と土佐のほとけ展④(名留川観音堂古仏群)

一昨年の年末に多摩美大で開催された「祈りの道へ-四国遍路と土佐のほとけ
展」でこの名留川観音堂古仏群が展示されていた。私が訪れた函南の「桑原薬師堂」や河津の「南禅寺(なぜんじ)」のように地域の人々で守られてきた仏像で、県の調査で再発見されたほとけたちだ。この展覧会の主催者である多摩美大の青木先生の「四国の仏像」に発見の経緯が記載されており、仏像保存のために奔走されたとのこと。今は土佐の「法喜院」の保管施設が整備され安置されている。ずんぐりとした体型で台座まで一木造りの「菩薩形立像1号像」は、青木先生によると紀伊水道の対岸に位置する有田川流域の仏像に類似性が認められるとのこと。平安時代の古佛から紀伊と土佐の交流が、かいま見れる仏像だった。