2012年6月23日土曜日

勝林院の阿弥陀如来

平成21年の秋に京都大原を訪ねた際、三千院の次に訪れたのはここ勝林院だった。紅葉まっさかりの頃で、観光客の多さに辟易していた三千院とはうって替わって、ここ勝林院は人影もまばらで静かだ。ガイドブックに書いてあったボタンを押して、天台声明(てんだいしょうみょう)を聞きながらお堂に入った。中には平安時代作の大きな阿弥陀様がいらして圧倒された。正面も迫力があるが、横顔もすばらしい。夜行バスで京都に来た疲れた体を癒してくれるお顔だ。ちょうどおあつらえ向きに椅子があり横顔がじっくり拝観できた。あまりの気持ちよさに思わずカメラを置き忘れてしまうぐらいだ。後でガイドブックをみるとその椅子は「美男のあみださんの指定席」と呼ばれており、どおりでいい表情が拝められるわけだ。立ち去りがたい気持ちを抱きながら、次のお寺に向かった。

2012年6月16日土曜日

東大寺の阿弥陀如来(解脱上人貞慶展①)

県立金沢文庫で6月8日(金)から解脱上人貞慶展が始まった。鎌倉前期に奈良で活躍した興福寺の僧で東大寺の重源(ちょうげん)とも親交があり、運慶・快慶とも交流があったという。この展覧会は奈良国立博物館で開催されていたのを、規模を縮小して県立金沢文庫で開催されるため、奈良の名品の数々が出展されるので期待される。最初に紹介するのは2年前に東大寺大仏展でも展示されていた、快慶の阿弥陀如来だ。金泥塗りのすばらし仏像で、衣の部分に切金文様を表す入念な仕上げが採用されている。重源の依頼快慶が製作し供養導師は貞慶が務めた。金泥塗りの仏像としては、先月東博で開催された快慶作弥勒菩薩が有名だが、この仏像もすばらしい出来だ。普段は東大寺で、一年に一回しか見れない仏像にまた会えるのが楽しみだ。

2012年6月9日土曜日

興福寺食堂の千手観音

平成20年に奈良を訪れた際、興福寺を参拝した。特別公開の南円堂・北円堂や東金堂・五重塔を周り最後に国宝館に向かった。国宝館で有名なのは阿修羅だが、同じく国宝の「千手観音立像」もみごたえがある。鎌倉期の初めに成朝によって造像がはじめられたが途中でなぜか中断し、その後40年間も経過して完成した仏像だ。像高が5メートル20センチの巨像で充実した顔の表現や深く粘りのある衣文などから奈良仏師の作であることは間違いない。運慶の父康慶に後継者の地位を追われた成朝に代わり慶派仏師が引き継いで完成させたのだろうか。興福寺国宝館も新しくなってからまだ行っていないが、展示方法や照明も一新させたと聞く。いつか機会があれば訪れたいと思う。

2012年6月2日土曜日

愛嬌のある毘沙門天

東博の「新指定国宝・重要文化財」展で道成寺の愛嬌のある毘沙門天に出会った。この毘沙門天は新指定ではないが重要文化財として、東京国立博物館に預託されている。通常毘沙門天は恐ろしげな顔をして睨みつけているが、この仏像は何とも愛嬌があるどちらかというとかわいらしい印象だ。後補の左手首を除いては、本体から足元の邪鬼まで桧の一木造りだ。昨年の夏訪れた道明寺には平安時代のかわった仏像が多かったがその中の異色作であることはまちがいない。魅力がある仏像のため、今開催の彫刻のコーナーでも展示されているという。また会いに行きたくなる仏像だ。