2016年8月28日日曜日

三重の美仏④(普賢寺の普賢菩薩)

平成23年に放送された「日本人こころの巡礼」という番組のなかで東寺の五大
明王とともに紹介されたのがこの普賢寺の普賢菩薩だ。いつか会いに行きたいと思っていたが、今回お寺に予約して拝観の運びとなった。伊勢神宮からタクシーに乗り山間の多岐郡の長谷寺式十一面観音がある近長谷寺に参拝してから普賢寺に向かった。普賢寺の開創は白鳳時代で普賢菩薩は平安前期に製作された仏像だ。普賢菩薩は通常「日本国宝展」で見た大倉集古館像のように白象の上で合掌し結跏趺坐するのが通例。しかし本像は横たわってうずくまる白象の上に乗るもののの、手には如意を持ち半跏趺座(はんかふざ)する非常に珍しい姿だ。大振りの宝冠や耳の後ろから肩までかかる髪、両肩にかかる衣文の表現に定朝様式以前の古い作風が感じられる。厚い胸板や直線的な鼻筋、首に刻まれた三道や引き締まった口元にたくましさと力強い意志が漂う菩薩像だ。ここでも田中ひろみ氏のブログが役立ち本堂にある半肉彫りの千手観音やエキゾチックな微笑みをたたえる十一面観音を拝観した。御住職の勧めで予定になかった金剛座寺の仏像を拝観することになり、彼のバイクの先導で金剛座寺に向かいお寺をあとにした。

2016年8月19日金曜日

三重の美仏③(弥勒寺の仏像群)

今日もすばらしい仏像との出逢いが待っていた。最初の計画では入れていなかっ
った三重の奥地の名張の弥勒寺に向かった。みうらじゅん氏の東海美仏散歩に紹介されていたがイラストレーター田中ひろみ氏のブログをみて俄然行きたくなり早速予約した次第だ。管理人の案内で中に入ると中央の1メートル半の薬師如来や十一面観音や二天像などがところ狭しとあり仏像博物館のようだ。薬師如来は平安時代後期の作品らしくマルク優しい顔が特徴的だ。管理人の説明によると薬壷には菊の御紋が入り、天皇勅願で造られたことがわかる。私はじっくり観賞して猛暑の中、次のお寺に向かった。

2016年8月18日木曜日

三重の美仏②(太江寺の千手観音)

本日三重の美仏巡り二日目、朝一番に訪れたのが二見浦の太江寺だ。三重の旅は太江寺の千手観音が見たくて計画したようなものだ。階段下の十王堂を見てから、階段を上がり、お寺の方が上がって来るのを待った。しばらくすると係の女性が現れ住職に連絡して本堂内で拝観の運びとなった。千手観音は鎌倉時代の作だが、平安時代の作風が見られる。像高は150センチあまり、寄木造で素地像。全体的な印象は壇像風だが、伊勢神宮に由来する輿玉神社の本地仏だといわれている。横の扉も開けてもらい、唇の彩色やどっしりした量感があり素晴らしかった。目は彫眼でまっすぐ見ており、白毫は水晶がキラリとひかる。厨子の中でライティングされて神々しく、堂々として迫力を感じる。ご開帳日に来て良かった。伊勢神宮に向かうバスの時間もあるので、足早にお寺を後にした。

2016年8月17日水曜日

三重の美仏①(慈恩寺の阿弥陀如来)

今日から三重の仏像巡りをしている。今日は亀山の慈恩寺に向かった。慈恩寺
は無住の寺で市役所が窓口となって世話人の方に連絡をとるしくみになっている。日程を連絡してあったので、世話人の方が待っていた。本尊は阿弥陀如来でもとは薬師如来だったと言われている。改作あったかは亀山市の教育委員会は薬師如来に薬壺を持たないものもあることから作り替えはなかったと世話人の方が話していた。製作は奈良時代後期か平安時代前期で、京都神護寺の薬師如来に雰囲気が似ている。桧一木造で世話人の方の説明によると木屑漆を一部使用し、足先にその特徴がよく表されているとのこと。お寺と仏像の説明が入った説明書をいただきいた。よく研究された文章で、観心寺如意輪観音などの乾漆系木彫仏の作例まで記載されていた。思いのほか丁寧なご対応で、三重の仏像巡りのいいスタートがきれてお寺をあとにした。                                                                                  

2016年8月13日土曜日

観音の里の祈りとくらし展Ⅱ⑤(正妙寺の千手千足観音)

TV見仏記でみうらじゅん氏・いとうせいこう氏を歓喜させたのが、正妙寺の千手
千足観音だ。普段は小さな祠にまつられているが、TV見仏記で人気に火がつき今では観光バスで参拝するまでになったとか。その仏像が上野の芸大美術館にやってくるということで、ひそかに期待していた。てっきりガラスケースの中での展示と思っていたが露出展示で床の線にはいらないよう気をつけて鑑賞した。なんといってもユーモラスな顔つきが特徴的だ。これでも忿怒相(ふんぬそう)をあらわして眉間にしわをよせている。江戸時代の50センチ足らずの仏像だが、歯を見せて手にはいわゆる「ダブル錫上」とみうらじゅんがいった錫上と戟をもっている。会場の雰囲気を一気になごませる仏像だ。千手観音は多く見ているが千足観音は見たことがなかったのでその造形に興味深く鑑賞できた。念願の仏像に出会えて満足して会場をあとにした。

2016年8月7日日曜日

観音の里の祈りとくらし展Ⅱ④(来現寺の聖観音)

展覧会の中央でひときわ目立ったのが、来現寺の聖観音だ。TV見仏記でも他
のメディアでも紹介されたことがない仏像だ。弓削町の観音堂に安置される、堂々としたボリュームあふれる等身大の平安時代の聖観音像だ。像高180センチ足らずだが、台座を含めると2メートル近くあり見上げるように拝観した。特徴的なのは山形の髻で簡素であるが、目鼻立ちは大振りで美ししい。左手は腕前で蓮華を持ち、右手は垂下しているのは比叡山横川中道の聖観音に通じる。まだまだ奥深い長浜の仏像底力を感じて次ぎの展示品に向かった。