2011年2月27日日曜日

伐折羅(バサラ)大将

平成20年秋に伐折羅大将に会いたくて新薬師寺に向かった。最近やたらと世間を騒がせている十二人の大将がそこにいらっしゃる。今年のJR東海キャンペーンで極彩色になったり、ガチャガチャでフィギアになったりと伐折羅大将は大忙しだ。ホテルを出て朝一番に新薬師寺に向かう。お堂の中に入ると黒い円形の須弥壇があり、中央に座っている平安時代前期の薬師如来を囲んで、十二神将がそれぞれ外側を向いている。昭和に復興された一体の波夷羅(ハイラ)大将を除いてすべて天平時代の国宝だ。一通り見て伐折羅大将の前に向かった。焔髪と称される怒髪天を突く髪毛を逆立て、剣を握っていない手にさえ力が入っている表現が圧巻だ。最近の研究により髪は燃え上がるような赤、顔はクールな青で塗られていたという。新薬師寺は天平のころは七佛薬師の寺であったことも最近わかってきた。天平の極彩色に彩られた十二神将に思いをはせて寺をあとにした。

2011年2月18日金曜日

運慶の大威徳明王

今回の運慶展宣伝文句は「初めて出会う三体の大日如来/初作と最晩年作」とのことだ。金沢文庫で運慶展が開催される理由になったのが、この最晩年作の大威徳明王だ。金沢文庫に併設された称明寺光明院で発見された。平成十九年にその納入品の奥書から運慶の記載がみつかった。大威徳明王は六面六手六足で水牛に乗る姿が東寺の像で確認できるが、本像は破損してなくなっている部分が多い。想像以上に小さい像だが、太づくりで引き締まった体つきとそのお顔の恐ろしげながらも端正な趣はさすが運慶だ。山本勉先生によると奥書に大日如来・愛染明王とセットで作成されたとのこと。まだ発見されてない運慶作品に思いをはせた。

2011年2月10日木曜日

滝山寺の帝釈天

運慶展ではじめて滝山寺の帝釈天に出会った。聖観音・梵天・帝釈天の三尊でお寺では拝観できるが、今回は帝釈天だけが金沢文庫に来ていた。写真で見るより小さかったが、頭の飾りが変わっており天衣の波打つ様もみごとだ。運慶が頼朝の後援で東寺の修復を行ったあとの作品のため、髻や胸のバックルなどあの東寺のイケ仏にそっくりで興味深い。会場では背中も拝観できるような展示になっており、天衣が両肩ずれ落ちているところがよく見えた。明治時代に色が塗りなおされているが、いい感じの渋い色で像の印象を壊していない。会場には聖観音の装飾金具も展示されており、運慶工房に腕利きの金具職人がいたことがわかり面白かった。山本勉先生によると顔だちはその後の興福寺弥勒如来に通じる厳しくクールな感じだという。運慶作品の分岐点になった仏像だと感じた。

2011年2月5日土曜日

運慶展

本日、県立金沢文庫で開催されている「運慶展」の鑑賞会を仏像クラブで開催した。参加者は男女合わせて7名とにぎやかになった。金沢八景の龍華寺によってからいよいよ「運慶展」に向かった。事前に仏像の説明をするよう依頼されていたので、にわか勉強だったが智拳印の意味や運慶が十一ヶ月かかって造った初作であるなど、うまく説明できたと思う。円成寺の大日如来は奈良で一度見ていたので再会となったが、何度見てもいい仏だ。今日図禄を買ってからわかったことだが、光背には製作当時は37尊曼荼羅の小彫像がつき、台座下に8頭の獅子があったとのこと。見てみたかった。U案内人はずっと思い続けていた運慶の大日如来に会い感動している様子だ。ほかにも初めて見る滝山寺の帝釈天や称名寺光明院の大威徳明王など、仏像ファンには夢のような展覧会だった。