2014年3月29日土曜日

法隆寺宝物館(伎楽面)

藝大の「観音の里の祈りとくらし展」を拝観したあと、東博の法隆寺宝物館
に向った。法隆寺宝物館には1年前の冬と先月訪れたが、第三室の伎楽面(ぎがくめん)が保存のためいつも閉まっており、今回は年3回の貴重な公開日であったため、初めて第三室に入った。会場は思ったよりも明るく1400年前から伝わる法隆寺の宝物をじっくり鑑賞できた。またちょうどタイミングよくボランティアガイドの説明と出くわしより深く理解できた。伎楽とは大型の仮面をつけ、寸劇を交えながら、音楽とともに野外を練り歩くという仏教の儀式で、昨年いった當麻寺では今でも行われている「練り供養」として残っている仏教儀式だ。法隆寺の伎楽面は東大寺や正倉院より古く、7世紀にさかのぼるのはこの伎楽面だけだ。伎楽面はどれも思ったより大きく中には縦40センチぐらいのものもありヘルメットのように後頭部までつくられている。中でも印象に残ったのが、「崑崙」(こんろん)で説明によると美人の呉女にいいよって卑わいな振る舞いをしたために、力士にこらしめられる役を演じたらしい。他にもユニークな面が揃っていて興味がつきない。また訪れたいと思った。

2014年3月22日土曜日

観音の里の祈りとくらし展

本日(3月21日)東京上野の藝大美術館に「観音の里の祈りとくらし展」を見
に行った。滋賀県の仏像展は何回か行っているが、今回は長浜市主催の展覧会とのことで、北近江の観音様だけの展覧会となっている。白洲正子や井上靖など多くの作家・文化人を魅了してやまない、北近江の観音様は国宝の渡源寺十一面観音や村の娘さんのような石堂寺十一面観音など魅力的な観音様が多い。長浜市だけで100を超える観音様がおられるため、一般にはあまり知られていない観音様も多く、今回の出展一覧にも写真でも見たことない観音様があり、事前準備の必要性を感じた。浜松町の滋賀県アンテナショップで観音の特集が記載された機関紙などを購入してから展覧会に出かけた。会場では赤後寺の千手観音が正面中央に控え、奈良時代の木心乾漆(もくしんかんしつ)の菅山寺十一面観音や総持寺の千手観音など大小18体の観音様がところせましと展示されていた。なかでもよかったのが岡本神社の坐像の十一面観音だ。会場では大画面に北近江の観音様と人々の思いが伝わるVTRが流れており、よりいっそう興味が持てた。いつまでもいたい、気持ちを抑えつつ会場をあとにした。

2014年3月15日土曜日

法隆寺宝物館(半跏思惟の仏N156)

昨年の冬、訪れた法隆寺宝物館に一年ぶりに先月訪問した。この半跏思惟
像は東博のホームページに写真が掲載されていたもので、今回注目した仏像のひとつだ。台座の銘文により製作年代が飛鳥か白鳳期の製作と二つの説があるが、私はあえて飛鳥時代を押したい。飛鳥時代の早い時期に製作され、同じ時代の中宮寺「菩薩半跏思惟像」や広隆寺の「弥勒菩薩」に影響をあたえたのではないだろうか。右手の指先を頬にそえ、右足を左膝ににのせて何か考える姿の菩薩像を菩薩半跏像あるいは半跏思惟像という。この姿の像はインドや中国では釈迦の出家前であるシッダルタ王子の姿だといわれている。朝鮮半島・三国時代の仏像からの影響をうけ、胴と腕が異様に細く作られている。今回もVR阿修羅像の上映時間がせまっていたので早めに宝物館をでて帰りにミュージアムショップにて法隆寺宝物館の名品ガイドを購入した。48体仏は数が多いので、これからは見たい仏像をこのガイドで調べてから行こうと思った。

2014年3月9日日曜日

弘明寺の十一面観音

本日(3月8日)仏像クラブで初めて弘明寺を訪れた。年末の仏像クラブの忘
年会のおりにぜひ拝観したいと会員の中から意見があり、急遽計画した鑑賞会だ。調べてみると、弘明寺は坂東三十三ケ所観音札所のひとつで今年は午年大開帳とのこと。本堂入り口で拝観料を払い記念のミサンガのような縄をいただき、観音様の前に向った。目の前に鉈彫りの十一面観音が厨子のガラス越しに見えた。係りの方によると普段は直接拝観できるが、文化庁の担当者が来るため本日は締めているとのこと。ガラス越しにもすばらしさは十分伝わった。像高180センチと思ったより大きく、鉈彫りが見事だ。彫りかけた途中で手を止めたかようなノミ目を意図的に残す鉈彫り表現の初期の傑作だ。とても穏やかな顔つきで、心和ませてくれる。鉈彫りが登場したのは平安中期で、定朝に代表されるような温和な作風へと、人々の好みが移ったころに製作されたからだという。心穏やかになり本堂を出た仏像クラブの面々であった。

2014年3月1日土曜日

VR作品興福寺国宝阿修羅像

今週の日曜日,東博に「VR作品興福寺国宝阿修羅像」を鑑賞しに行った。
東洋館の地下一階にある「TNM&TOPPANミュージアムシアター」では大スクリーンにバーチャルリアリティな阿修羅や八部衆が映し出され、ナビーゲーターと呼ばれる語り手の説明により映像を鑑賞する仕掛けとなっている。スクリーンに映し出された「阿修羅」は本物と見まごうばかりに精巧にできているのには驚いた。2009年に「国宝阿修羅展」で流していた阿修羅VR作品の20分バージョンより、格段と技術が進歩して40分バージョンになっている。またナビゲータのゆっくりとしたおちついた解説がここちよく、阿修羅や八部衆の世界にどっぷりと浸かれた。ナビゲータの説明で阿修羅の3つの顔の表情は自分の過ちを仏に懺悔(ざんげ)し、内面を見つめ、仏教に帰依することを決意するという心の変化を表しているとか。阿修羅像には熱心な仏教徒であった光明皇后の最愛の母への思いと心のよりどころとした「金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)」の教えが表れていることなどが語られた。欲を言えば阿修羅や八部衆の童子形の理由がわずか1歳で亡くした「基(もとい)皇子」への光明皇后の思いが重ねられていることが語られればよかった。VR作品を見終わってここちよい余韻にしたりながらミュージアムシアターを後にした。