大安寺の一木造りの仏たち
平成22年の春、遷都1300年祭で盛り上がる奈良に向かった。五劫院のアフロな仏を見た後、お昼をすませてからバスで大安寺へ向かった。大安寺ではちょうど遷都1300年特別開帳として本尊の十一面観音と馬頭観音が拝めるとのことだった。境内では遷都1300年の記念行事で、人が大勢いたがまず本堂に上がり十一面観音に参拝した。頭部と左手は後補だがまぎれもなく天平の観音様だ。次に嘶堂(いななきどう)の馬頭観音を参拝する。こちらは参拝者がまばらで落ち着いてみられた。頭上に馬頭がないが寺伝によると馬頭観音とのこと。上歯で下唇をかみ、目を吊り上げた顔が印象に残った。最後に宝物館の讃仰殿に向かう。中に入ると観音3体と四天王の計7体の仏像が居並ぶ。それらがすべて重要文化財で一木造りの天平仏だ。目尻をつり上げ、口をカッと開いた観音には珍しい憤怒の表情をした楊柳観音や解剖学的正確さを仏像という虚構のなかに反映させた四天王などすばらしい仏が目白押しだ。後で調べたら唐招提寺の木彫群と同じく中国人の工人による製作だという。大安寺は想像以上に国際的な寺で、大仏開眼をしたインド僧の菩提壱僊那(ぼだいせんな)や中国僧が滞在していたという。青い目の僧たちが闊歩する国際的な大寺院に思いをはせ、大安寺を後にした。
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