不退寺の聖観音
平成22年の春、遷都1300年で沸く奈良を訪れた。今回の奈良訪問の目的は遷都1300年記念特別開帳で多くの仏像を見ることだったが、午前中忙しかったので午後は佐保路・佐紀路の3観音めぐりをのんびりしようと計画していた。佐保路・佐紀路の三観音とは不退寺・海龍王寺・法華寺にまつられている観音を指し、春爛漫の道を抜けるとせんとくんののぼりが見えてきた。遷都1300年特別開帳を行っている寺には、必ずせんとくんののぼりがありわかりやすい。山門を抜けて右に小さな池を見つつ、花々が咲き乱れる境内を行く。本堂は狭いが菱欄間といわれる格子が美しい。さすが色男、在原業平の創建と言われる寺である。中にはご住職がおられ寺のいわれや仏像を説明をしていただいた。遷都1300年で多くの人が訪れたのか、ご住職の声はいささかかれていたが、ご親切に説明していただいた。中央は聖観音それを護るように五大明王が居並ぶ。左から大威徳、金剛夜叉、不動、降三世、軍荼利。聖観音は在原業平が思いを寄せる女官をモデルにして業平自ら彫ったとの伝説があり、肉感的に白く塗られた体に大きなリボンをつけ、寄り目がちでしごく女性的な仏像だ。聖観音は手の持った蓮のつぼみを誰かに向けて差し出しているように見える。平安のプレイボーイ在原業平好みの聖観音だ。春のうららかな日差しにつつまれた不退寺を後に次の観音の寺に向かった。
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