多田寺の十一面観音
平成2年の夏に近江・若狭の仏像を訪ねた。4日目に「海の奈良」といわれるほど多くの仏像がある小浜を巡った。この夏はとにかく暑い夏で、まず最初に訪れた多田(ただ)寺に向かうと外で涼をとらえているご住職とめぐり合い本堂の中に快く入れていただいた。そこには素晴らしい仏像が集っていた。中央に薬師立像、四隅を護るのは四天王で左右に6体ずつの十二神将がある。薬師の左手に十一面があり、右には月光菩薩がある。柔らかな顔の十一面は孝謙天皇の姿を写したと言われる。その孝謙天皇の願いによって日光菩薩の位置に安置されたとのこと。孝謙天皇はかの道鏡を天皇の位につけようとはかり和気清麻呂に阻止された、気の強い女性を思わせるのでこのような伝説が生まれたのではないか。晩年の女帝は、深く仏教に帰依し鑑真に唐招提寺を送ったことでも知られている。この十一面のお顔を見ているとおだやかな晩年をすごされた女帝の姿を写したのではないかと想像され、飽くことなく十一面のお顔をながめ次のお寺にレンタサイクルで向かった。
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