2024年4月21日日曜日

みちのくいとしい仏たち⑦(青森県今別町本覚寺多聞天)


 この作品をみたときどのような風景のから生まれたか想像できなかったが、「津軽海峡冬景色」で歌われる「竜飛岬」近くの漁師町との解説に合点した。お寺の目の前が津軽海峡という本覚寺境内の多聞天堂に寛政二年(1790年)からご神体としてまつられてきた像。今も年に1度漁師たちがそろって祈祷におとずれる多聞天は御簾のかげに秘せられきたため当初の彩色がよく残る。寺伝の「多聞天像」は持物や形姿からみて正しいが、背後に大きな竜を背負い、顔は閻魔、さらに胸の宝珠は大黒手には多聞天お決まりの宝塔を持つ。漁師の願いが一つに結実した結果で、民間仏とはそういうものだろう。竜の造作がみごとなことから像すべてを船大工又は宮大工の手によるものであろう。民間仏のおもしろさがわかる印象に残る作品だった。

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