運慶の無著・世親像(解脱上人貞慶展 番外編)
今回の「解脱上人貞慶展」には出展されていないが、貞慶がその製作に指導的な役割を演じたのが、興福寺北円堂の諸像だ。この展覧会をきっかけに貞慶のことを調べていくと、興福寺学僧として活躍しており、特に「唯識」の大家であったという。「唯識」を体系可しまとめたのはインド僧の無著(むじゃく)・世親だといわれているので、北円堂の弥勒如来の脇侍として無著・世親を置いた貞慶の発想もうなずける。平成20年に訪れた北円堂の無著・世親像はどこか不気味で怖い印象を受けた。みうらじゅん氏も「小学生のころからこわかった。生きているみたいで、それくらい、いないものが、さもいるように見える究極のリアリズムです」と言っているのもうなずける。運慶が貞慶の指導をもとに運慶の大胆な表現力を付け加えた北円堂の諸像は、解脱上人貞慶ゆかりの仏像と言っても過言ではないだろう。
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