2023年8月20日日曜日

特別展『聖地 南山城』⑤(朱智神社牛頭天王)

 

今回の特別展「聖地 南山城」では9年前の京都展と違い神像に近い仏像や神像も展示されている。私の訪れた神童寺も北吉野の山号を持ち、ここで紹介する朱智神社は山城・河内・大和の三国の境界線の山城国側に位置する。高ケ峰山上に位置する朱智神社に祀られているのが牛頭天王像だ。三面いずれも忿怒の相で炎髪を立て、頭頂には牛頭をあらわし、筒袖衣と大袖衣を着け、右足を少し上げて岩座上に立つ。左手に宝珠をのせ、右手の第二指・第三指を立てて剣印を結ぶが、両手は後補のため当初の手勢は明らかでない。天冠台上の地髪部には、正面の左右に各1両脇面上に各1の枘穴がある。「牛頭天王御縁起」に赤い角を有するとあるのことと関連がいちおう考えられる。牛頭天王はもともと災厄をもたらす疫神だったようだが、社殿を設けてうやうやしくまつることで防疫神に転ずるという信仰があった。三国境界に位置する朱智神社で外部からの邪鬼の侵入を防ぐために本像が祀られたと推察される。私もコロナ禍発生の折には友人から教えられ岡寺に「悪疫悉除祈祷」のお札をいただいたものだがどの時代になっても日本人の根底にある信仰のあらわれだろか。

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