2020年10月25日日曜日

特別展「相模川流域のみほとけ」③(国分寺の不動明王)


 相模川流域のみほとけ展は昭和44年から平成までの長年にわたる仏像調査の結果発見された平安から鎌倉時代の仏像の展覧会で神奈川歴博だから実現できた展覧会だった。ここで紹介する国分寺不動明王も30センチ余りの小像でいかにも寺の厨子に隠されていた仏像という雰囲気だ。ガラスケースに納められて肉眼では分かりにくいが確かに玉眼を嵌入し、図録によると顔の筋肉の凹凸は立体的であり、引き締まった体つきは鎌倉時代の様式が感じられる。構造は割矧ぎ造りで内刳りは丁寧に深く彫られている。別冊太陽運慶に写真が掲載された京都北向山不動院不動明王に作風が似ており、奈良仏師康助が造像し海老名の国分寺に送られたものとも考えれられる。康助と言えば奈良仏師の後継を康慶に指名した話は有名で、このような写実的な表現を定朝風に取り入れたさきがけの仏師だ。運慶の素地はこのようなところから生まれたと考えさせられる不動明王だった。

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