2017年8月19日土曜日

信州仏像巡り③(清水寺の地蔵菩薩)

前回の善光寺御開帳時に長野県信濃美術館で開かれた「”いのり”のかたち」
展では多くの長野の仏像が展示されていたが、そのころは信州の仏像の素晴らしさに目覚めてなかったので、行かなかった。その後信州の仏像の写真集を見つけてそのレベルの高さに驚き、今回の訪問となった。今回紹介する地蔵菩薩は、「”いのり”のかたち」展には出展されていなかったがSNSで写真が載っており注目した仏像のひとつだ。地蔵菩薩は千手観音と同じく平安時代初期に製作された像高157センチの一木造りの仏像だ。お寺の方とも話したが、斜め横から表情が素晴らしくうっとりした。いかにも堂々たる量感、動きのある像容、そして彫り強い衣文の特色が見受けられる。正面の裳を大きな波の間に小波を二条はさむ、複雑な翻波式衣文で飾り、胸の肉身部と鮮やかなコントラストをみせている。お寺の方の説明によると平安時代の地蔵菩薩としては錫杖を握るお姿は珍しいとのこと。このお姿は鎌倉でよく見られる鎌倉時代の特色であり、鎌倉時代以前は右手をそっと垂らししている姿だった。清水寺の地蔵菩薩は右手に錫杖を握っており、造像当時から錫杖を持ったお姿であった可能性が高く、錫杖を持った地蔵菩薩像として、日本最古の像と云われている。清水寺にはこのような驚くべき仏像が人知れず祀られていたのに驚かされ、地蔵菩薩の前で動けなくなった。



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