康弁の龍燈鬼
興福寺国宝館は慶派仏師の作品の宝庫だが、なかでもユーモラスなのが、運
慶の三男康弁が造った龍燈鬼だろう。胎内より康弁作との書付がでた仏像だ。みうらじゅん氏によると、四天王に踏まれていた邪鬼が、「ソロデビュー」したのがこの天燈鬼・龍燈鬼だそうだ。龍燈鬼は頭上の灯籠をのせ、上目づかいにそれを見る表情がなんともユーモラスだ。のこぎり状の眉は銅版を切ったもの、眼はもちろん牙も水晶製だ。あごにはひげを生やした穴があるという。康弁にはこの像の他に現存する作品は知られない。若くして早世したのか、慶派を放逐されたかはわからないが、彼の作品をもっと見たかった。いずこの寺にひっそりと残されている彼の作品が発見される日を夢見て阿修羅の待つ八部衆のコーナーに進んだ。
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