唐招提寺の伝衆宝王菩薩立像
2010年に遷都1300年で盛り上がる奈良を訪れた際、唐招提寺に向かった。唐招提寺の今の本尊である金堂の仏像に圧倒されたあと、新宝蔵が御開帳とのことでそちらにある仏像も見ることとなった。お目当ては鑑真が生きていた時代からあった唐招提寺の仏像だ。脱活乾漆の本尊ができるまではこの木彫仏が本尊だった。鑑真は来日した際「仏像はカヤの木でつくるべき」との言葉によりその後壇像が仏像の主流になったという。新宝蔵内には所狭しと仏像が並ばれており、旧本尊の薬師如来や伝獅子窟菩薩共に私の目を引いたのは「伝衆宝王菩薩立像」だった。残念ながら手は失われているが、寺伝によると三つの目と6本の腕があり東大寺法華堂の本尊と同じく「不空兼羂索観音」ではないかと言われている。背筋をまっすぐに伸ばし、はるか遠くを見やるかのようなまなざしは、堂々として大陸的だ。鑑真は戒律を日本にもたらしたばかりでなく、多くの工人を中国から引き連れたためそのような風貌なのはよくわかる。鑑真やその弟子が朝な夕なに祈る姿が思い浮かべながら、静かに新宝蔵を後にした。
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