2021年3月5日金曜日

特別展「横浜の仏像」⑥(弘明寺十一面観音)


 弘明寺の十一面観音は以前仏像クラブで御開帳のおりに拝観したが、いよいよ山本勉先生の講演でもこの仏像の話に及んだ。まず山本先生は鑑真来朝から平安前期までの中央仏と地方仏の比較を語り代用壇像(カヤ)による官営工房で生み出された捻塑像(木心乾漆・脱活乾漆)の整理・洗練された仏像に対し、民間私寺による木彫像の野趣あふれる個性的な仏像が生まれたとのことだった。先日のBS日テレ「ぶらぶら美術館」でも東北の仏像に似ているとして証菩提寺の薬師象が紹介されたが、弘明寺十一面観音がそれにあたる。次に山本先生の講義は鉈彫りの説明に入り「像の全面または大部分に、水平方向のノミ痕を残す素地仕上げの木彫像」と説明し木で仏像をつくることの根本思想の表現とし、つまり木から仏があらわれる表現で、地方の独自性を主張していると。弘明寺が当時の群のあった場所にあり、鉈彫りに公的性格を持たせたと主張した。展覧会場でU案内人が指摘した仏像が割れていることに対しても山本先生によると立木から仏像をつくる神木のためとの説明だった。ひとつの仏像からこのような洞察をする山本先生に頭がさがる思いで十一面観音を鑑賞していた。


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