2014年1月31日金曜日

康勝の空也上人像

私が幼いころ新宿のデパートで「六波羅蜜寺展」が開かれた。
そのなかで強烈な印象に残ったのが、運慶の四男「康勝」の空也上人像だ。口から人型の仏を6体出しているのが子供ながら興味をもったものだが、それが阿弥陀如来で「南無阿弥陀仏」ととなえている様を表していることは、大人になってから知った。仏像クラブで何回も京都を訪れながら、六波羅蜜寺を参拝したのは、一昨年の秋が初めてになった。金色の文字で「六波羅密寺」と書かれたスリッパを履いて収蔵庫のほうに向う。運慶の地蔵菩薩を拝観したあと、空也上人像と再会した。首から鉦鼓(しょうこ)を下げ、右手に鉦鼓を打ち鳴らす撞木(しゅもく)、左手には鹿杖(ろくじょう)、草履を履く。空也上人は生前念仏を唱え鼓などを叩いて踊る「踊躍念仏」(ゆやくねんぶつ)を行っていたと伝えられるが、この像はその姿を表したもので、空也上人の人となりをよく表現している。線によるしわを多用せず、骨格を意識した肉付けを施す顔は興福寺北円堂の無著・世親像に通じるものであり、おそらく運慶の指導の下、康勝の巧みな技を見ることができる。収蔵庫のすばらしい展示に満足して、その日の宿に向った。

0 件のコメント:

コメントを投稿