2012年9月1日土曜日

仁和寺の増長天

8月の東博訪問の際、彫刻のコーナーに仁和寺の増長天が展示されていた。昨年の「空海と密教美術」展でも展示されていたが、本尊阿弥陀如来の印象が強く、あまり覚えていなかった。今回改めて展示作品としてみると、小ぶりだが、袖の鋭い衣文(えもん)、甲冑の縁が反る表現、腹部と太もものふくらみ、腰を左に捻(ひね)って立つ姿に力がみなぎる優品である。邪鬼の踏まれっぷりもよく、宇多天皇創建当時に本尊と一緒に造られた仏像だ。創建当初は阿弥陀三尊・梵天・帝釈天・四天王の各像が安置されていたという。ありがたい仏像だが、頭部に対して体が短く、ずんぐりとした体型がどこかおかしく親しみがわく。彩色もよく残り、造像当時の鮮やかな色が、「御室御所」と言われる仁和寺の雰囲気を今に伝える優品だ。特別展とは違いゆっくり拝観できたのがよかった。

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