2011年8月19日金曜日

高野山と紀州仏像めぐり③(道成寺の千手観音)

紀州仏像めぐりで最後に訪れたのは、安珍清姫で有名な道成寺だ。この寺にはもうひとつの物語も伝承していて、それはかみながひめの伝説で文武天皇の后、藤原宮子のこと。正に梅原猛氏のあまと天皇の世界だ。暑い境内を抜け冷房がきいた大宝殿に向かった。大宝殿の奥に入り込んだ私は、その暗く広い部屋にたどり着いて、思わず声にならない声を上げた。国宝の千手観音を初めたくさんの仏像がところ狭しと展示してあった。千手観音は平安時代の作で、脇侍に日光・月光を配した珍しい三尊形式だ。千手観音は八頭身で、顔は他のどこでも見たことない男性的なエネルギーと静けさに満ちていた。特に斜め横顔が良い。ゆっくりといつまでも眺めたいが、安珍清姫の絵解きが始まるので、部屋をあとにした。絵解きを聞き終わったあと見仏記でも紹介された江戸期の五劫思惟阿弥陀如来を探す。聞けば念仏堂に安置されているとのこと。気の遠くなるような年月思惟を続けたため、髪がアフロ化した阿弥陀。五劫院・東大寺に続きこれで3体目という珍しい仏像が道成寺にあった。今回の紀州仏像めぐりは地方仏の魅力を発見する旅だった。人知れず、観光寺院でないところに隠れた名仏があったり、宿坊に泊まると拝める仏像に出会うなど、ますます仏像の魅力にはまる旅だった。

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