特別展「毘沙門天」⑪(観世音寺兜跋毘沙門天)
奈良博特別展「毘沙門天」の最後のコーナーは「兜跋毘沙門天」だ。東寺の
兜跋毘沙門天から東北岩手の三熊野神社の尼藍婆・毘藍婆まで一同に会して拝観することができた。中でも造形的に優れているのが九州大宰府観世音寺の兜跋毘沙門天だ。この仏像に会うのは3度目で過去、観世音寺には2回訪れたことがあり、九州仏のコーナーで一度紹介している。今回は展覧会場で間近に鑑賞できた。奈良博の図録によると東寺像が西域風なのに対し唐風とのこと。クスの一材から右腕を除く全身と地天・二鬼を彫りだす一木造りで、頭部は小さく作り、胸の下で胴を絞る独特のプロポーションを持ち、下半身の重量感が特に強調されている。これは聖林寺十一面観音にみられる釈迦のヨガと呼ばれるアナバーナ・サチを表すのだろう。頭には二重連珠文帯の天冠台を着けているいるのが注目される。地天女は大宰府の鬼門に位置する竃門山の祭神、玉依姫(たまよりひめ)か神功皇后を表している。中世以前にこの仏像がどこにあったか不明だがU案内人に買ってきてもらった「九州仏展」図録には最澄も訪れた竃門山が最も相応しいと書かれている。私もそう思う。素晴らしい造形に見ほれながら会場を後にした。
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