2020年5月1日金曜日

東大寺法華堂の梵天

2月に東大寺戒壇堂に参拝したのち寒風の中、法華堂に向かったがいつのまにか真冬の日差しがあたり暖かく感じ御堂への道を急いだ。中に入ると像高4メートルを超える大きな仏像群が迎えてくれた。私は以前お寺の関係者から説明を聞いたとき腰かけた、奥行き深い畳の敷いた段に腰かけ仏像群を見上げていた。中央に八臂の、いかにも強い法力に満ちて見える不空羂索観音立像。その左右に梵天と帝釈天。目の前には金剛力士が二体と四方に四天王の都合六体が警護をする。見えている像はすべて乾漆、奈良時代の傑作だ。この仏像群の中ではやはり目立つのが4メートルの梵天と帝釈天だ。中でも武装した梵天に目が行った。本尊の不空羂索観音(362センチ)より40センチも背が高くなっている。前から思っていたが、同じ堂内に本尊より大きい仏像があるのは少し不自然だ。不自然さはそれだけでなくこの法華堂のような組み合わせは他にない。梵天が左手に経巻を持ち、大きな中国風の衣の下に甲冑を着ているようにつくられているが、甲冑がないのが梵天という通説に反する。私が思うには遣唐使が盛んなこの時代は中国からダイレクトに新しい仏像の作風が持ち込まれ、その後本場中国では消滅した配置がここ奈良で時が止まったように1300年前の仏像が存在しているからだろう。そんなことを考えながら法華堂をあとにした。

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