2023年3月19日日曜日

特別企画「大安寺の仏像」⑩(楊柳観音)


 東博開催、特別企画「大安寺の仏像」も本日(19日)をもって終了とのこと。それを締めくくる東博学芸員による1089ブログが配信されたのでここに抜粋して紹介する。大安寺は日本最初の国立寺院で藤原京から平城京に移転後中国・インド・ベトナムの僧が来日し,国際色豊かな寺院だった。楊柳観音は慈悲の仏ですが、このように厳しい表情の仏は、密教の仏であることが多い。楊柳観音の厳しい表情から、この像が密教の存在を背景に造られた像であることを物語っている。バランスよく整ったプロポーションが目をひく。胸矢下半身の程よい張り、腰のわずかなくびれなどが美しさを際立たせる。顔は口を開ける動きに連動して頬が貼り、こめかみの筋肉が盛り上がっていることがわかる。胸飾りや腹の帯は一木造りのやり直しの聞かない作業で胸の飾りの花や珠のかたちを繊細に彫りだされている。腹の帯は斜めの格子状の文様が密に刻まれている。鑑真の一行のなかに鏤刻(るこく。金属や木に文字・絵などを彫りこむ)の工人がいた。本像に見られる緻密な彫りの背景には、彼ら工人がもたらした鏤刻の技術があるこもしれない。大安寺の仏像では、身体表現を意識した奈良時代彫刻の伝統と、大陸からの新しい形式が融合している。

2023年3月11日土曜日

令和5年 新指定国宝・重文展②(京都 上徳寺の阿弥陀如来)

新指定国宝・重文展では往々にして作品保護のため壊れやすい光背を外して展示されているケースがみられ、あの願成就院不動明王も光背なしの展示だった。ここに紹介する京都上徳寺の阿弥陀如来も文化庁HPや図録では素晴らしい火焔光背が展示されなく残念であった。上徳寺は京都五条にあり京都冬の旅2023の公開寺院となっているが、本尊は国宝重文展に出展のため一時期京都を離れて拝観することが出来た。印相が通例とは逆で深く自由な衣文の彫り口や張りのある肉付けより13世紀前半の製作とみられる。下半身のV字は印相とともに中国・宋時代の画像から採り入れたもので、鎌倉時代に奈良で活躍した善派仏師の作例にままみられ、同派の仏師によって造られたとみられる。問題の唇に水晶を貼装するいわゆる玉唇の技法はきわめて珍しいもので、生身信仰に関連するものと考えられる。鎌倉時代の優品で図像や作風に特色ある一作として注目される。毎年見ていた五条の街並みにそのような仏が隠されている、京都の奥深さに感動した作品だった。