2020年5月16日土曜日

特別展「毘沙門天」⑩(清凉寺の毘沙門天座像)

平成23年に清凉寺の兜跋毘沙門天を拝観したが、これは珍しい座像の毘沙門
天だ。「月刊大和路ならら」によると体を上下に一度材を切り離す胴切りという技法を採用し、かつ体の部分は基本的に前後2材ながら間に補材を挟んで胴部の奥行きを増すなどの複雑な工程を経ているそうだ。平成24年に訪れた京都長講堂の院派院尊作脇侍の天冠台に似ており、院派作とも考えられる。また仁和寺に残された図像には兜跋毘沙門天のように地天女と尼藍婆・毘藍婆が描かれており現在の岩座に座っていない説もある。また海老籠手は西域風だが唐風の鎧をつける点など本像と図像が一致するとのこと。また両胸に雄しべを伴う丸い花飾りをつけるのも珍しい。顔は赤く鎧と宝棒・宝珠は金色に塗られているが、中世における後補だ。私は顔つきや花飾りから奈良仏師ではなく院尊ではないかと推測するが、制作仏師や地天女など謎多き平安仏だった。

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