2015年1月31日土曜日

四国遍路と土佐のほとけ展③(笹野大日堂の大日如来)

今回の展覧会で1番楽しみにしていた仏像が笹野大日堂の大日如来だ。「にっ
ぽん心の仏像知られざる仏50選」においてこの仏像の存在を知った。四国の片田舎の村人から大切に守られた仏像が慶派であると発見したのが、今回の展覧会の監修者多摩美大の青木准教授であった。村人が大切に守ってきた仏像が文化的に価値のあるものであることに驚く村人の様子が描かれていた。毎年東博で公開される真如苑の大日如来に作風は似ているが、より穏やかな顔つきで湛慶工房の作品ではないかと言われている。像高50センチ足らずでおもったより小さかった。穏やかな表情が醸し出す雰囲気が会場全体をつつんでおり、とても癒された。大きなポスターを購入し会場をあとにした。

2015年1月24日土曜日

高野山の名宝展⑤

高野山の名宝展最後を飾るのは運慶の八大童子だ。普段、高野山霊宝館でも
一同に拝観できない八大童子だが、この展覧会ではなんと10年ぶりに一同に会するとのこと。空間デザイナー池田氏の演出によりひとつひとつの童子が迫ってくる感じを覚えた。山本勉先生も「運慶-リアルを超えた天才仏師」の中でで答えているが、真摯な中にどこかきょとんとしたあどけなさの残る矜羯羅(こんがら)童子、素直そうで気品のある制吨迦(せいたか)童子、翳りを帯びてエキセントリックな恵光(えこう)童子など表情から性格まで読み取れる運慶の技術に舌をまいた。この八大童子で私は運慶全作品31体すべて出会えたこととなる。静岡の願成就院にはじまり、逗子浄楽寺の阿弥陀三尊、奈良円成寺の大日如来や、京都の六波羅蜜寺の地蔵菩薩などひとつひとつが個性があり他にはない仏像だった。時にはバスの本数が少ない愛知県のお寺にでむくなどいい思い出になった。ところが昨年発売された山本勉先生執筆の「日本美術全集」によると、浄瑠璃寺伝来の十二神将や興福寺南円堂の四天王も運慶作品と考えられるとのこと。まだまだ運慶作品を求める旅はおわりそうにない。まだ見ぬ運慶作品をとの出会いを夢見ながら会場をあとにした。

2015年1月17日土曜日

三井寺仏像の美展③三井寺の毘沙門天

今回の三井寺仏像の美展のポスターでは、肥後定慶作の不動明王を取り囲む
ように四体の仏像が取り囲んでいる。その中のひとつが三井寺金堂外陣に安置されている木造毘沙門天だ。ひと目みて静岡願成就院の毘沙門天に似ていると思った。図録にも姿勢が同じとの記載があり京都で活動していた慶派が注文をうけ製作したものと考えられる。頭髪は毛筋彫りとし、髻を結い、天冠台より下ははマバラ彫に表している。彫りは運慶の毘沙門天に遠く及ばないが、師匠に近づこうと必死になっている弟子か孫弟子の姿が目に浮かぶ秀作だ。両目を見開き、口を半開きにし、腰を左にひねり、右足を少し開いて邪鬼の上に立つ姿になっている。図録によると三井寺は平家の焼き討ちにあい、源氏による復興をとげているとのこと。ここにも源氏と慶派の結びつきがみられる。タクシーの運転手と毘沙門天の前でうなりながら次の展示作品を見に行った。

2015年1月12日月曜日

四国遍路と土佐のほとけ展②笑い地蔵

仏像クラブを立ち上げた七年前、NHKで「にっぽん心の仏像」という番組を視聴
した。その際俳優の原田大二郎が訪ねたのが高知県大豊町にある定福寺だ。そこにある笑い地蔵と呼ばれる六地蔵に涙を流す原田大二郎の映像が印象的だった。高知県にはなかなか行く機会もないので、笑い地蔵に一生会えないと思っていた。今回の「土佐のほとけ展」でなんと多摩センターにある多摩美大美術館に来ているとのことで、昨年年末にでかけた。2階の展示室Dの1番奥に笑い地蔵は6体展示してあった。像高1メートルの地蔵菩薩は鎌倉時代の作でどこか不思議な表情を見せる。右から左に移るにつれ地蔵菩薩の表情が和らぎ、最後には歯を見せ笑っている地蔵様もおられた。正面を向いているお地蔵様もいれば、隣のお地蔵様に話しかけているようなお地蔵様もいて心暖まる時間をすごせた。安らかな気持ちになって会場をあとにした。

2015年1月10日土曜日

日本国宝展②(興福寺東金堂の多聞天)

昨年の日本国宝展で印象に1番残ったのが興福寺東金堂の多聞天だ。確かに
安部文殊院の善財童子や三千院の観音・勢至菩薩は来ていたが、拝観するのは2度目でそれぞれ割合明るいお堂の中でみているので印象には残らなかった。興福寺東金堂には多くの仏像があり、お堂も暗いので明るい展覧会場で見る多聞天は格別だった。多聞天の特徴は頭部を体に沈め、体をずんぐり太く造り、内にこもった重々しさで表されている。1997年に開催された「興福寺国宝展」図録によると所々に木屎漆(こくそうるし)を用いた技法が使用されているとの記載があった。さすが脱化乾漆製の阿修羅が造られた興福寺ならではの技法だ。すばらしい照明があたった仏像をいつまでも眺めていた。

2015年1月2日金曜日

高野山の名宝展④

昨年のことになるが、サントリー美術館で開催された「高野山の名宝展」で、はじ
めて快慶の孔雀明王と対面した。サントリー美術館は展示会場が4階と3階に分かれており、来場者は4階から鑑賞し3階に階段でおりる順路となっている。3階への階段を下りると下に快慶の孔雀明王が見える劇的な展示となっている。孔雀明王は檜材の寄木造で、目は玉眼。肉身は淡紅色、着衣は彩色の上に快慶お得意の截金文様を施す超絶技法で飾られている。まなじりを上げ、両目を見開いた端正な顔立ちには快慶無位時代の特色が顕著で、手足の巧みな配置や整理された衣文構成にも彼の造形的特質が示されている。孔雀明王は弘法大師空海が請来した図像とされ、それを快慶はみごとに立体的な仏像として表現している。図像を忠実に再現するため、あえて孔雀の足を細くしそれでいて安定している快慶の力量に舌をまいた。会場がすいていたため、近くにあるソファーにこしかけ、じっくりと作品を鑑賞できた。至福のひとときをすごしてから、八大童子が待つ第三展示会場へと向った。