2014年5月31日土曜日

南山城の古寺巡礼展④

今回の展覧会に先立って京都国立博物館は、約3年をかけて南山城の10
箇寺の文化財調査を行ったそうだ。この法性寺の地蔵菩薩はその調査の過程で発見された仏像で、私も見るのが始めてだった。法性寺は海住山寺の子院のひとつで、地蔵菩薩には玉眼が施された鎌倉時代の仏像だ。図録には嵯峨清涼寺の釈迦像を思わせる衣文線が特徴と書かれていたが、私はそのなんとも味のある仏像の表情にひかれた。するどい眼差しながら全体的にはおだやかな表情がよい。京博はよくぞ文化財調査でこのお地蔵様を見つけてくれたと感謝したいくらいだ。魅力的な仏像の展示が多い本展であったが、心に残る地蔵菩薩との出会いであった。

2014年5月24日土曜日

南山城の古寺巡礼展③

以前、南山城を訪れた際、寿宝寺の千手観音にこの展覧会で再会し感動し
たあと私の目をひいたのが、同じ寿宝寺の金剛夜叉明王とこ降三世明王だ。お寺で見た印象はなかったが、あらためて見るとすばらしい仏像だ。特に降三世明王が印象に残った。降三世明王は東寺像に見られるように、足元にシバ神とその烏魔妃(うまひ)を踏みつけており、この像もそのようになっているが、東寺と違うのは烏魔妃が座ったままで頭を踏みつけられているのが珍しかった。平安時代後期の作品で作者の遊び心を感じるいい作品になっている。別のお寺にも不動明王・大威徳明王・軍茶利明王は他の寺にあづけられており、今回の展覧会では当初の姿をよく残したこの仏像が選ばれたようだ。新たな仏像との出会いに感謝し、次のコーナーに向った。

2014年5月17日土曜日

方廣寺の宝冠釈迦如来

今週の日曜日に東博の「新指定国宝・重要文化財展」を見に出かけた。今
回指定された重要文化財のうち、私が注目したのは静岡県浜松市にある方廣寺の宝冠釈迦如来だ。南北朝・室町時代に活躍した院派の作品だ。院派は慶派と並ぶ仏師「定朝」の流れをくむ一派で、平安時代に一世を風靡した仏師集団だ。鎌倉時代に入ると、鎌倉武士に貴族に人気がある院派はきらわれ、奈良仏師の慶派が好まれていたとは、山本勉先生の本を読んで知っていた。南北朝・室町時代に入ると、足利尊氏に重用された「院吉」を初めとした院派が勢いを盛り返した知ったのは、今回の「宝冠釈迦如来」を見てからだ。足利氏に接近した「院吉」が凋落(ちょうらく)の一途を辿りつつあった院派を再生に向わせた記念碑的作品となっている。元は茨城にある佐竹氏の寺から明治になって移された仏像だ。「院吉」は足利家の菩提寺「等持院」の本尊を製作していることから、ここに運慶仏のときにみられる主従が同じ仏師に依頼する密接な関係が見て取れる。普段は光背があり華やかな雰囲気を持つ仏像だが、今回は光背をはずしての展示であったため、より仏像の作品としてのすばらしさが実感できた。私は展示ケースの前で長いこと動くことができなっかた。最後にもう一度釈迦如来を見て東博をあとにした。

2014年5月10日土曜日

南山城の古寺巡礼展②

今回の展覧会にわざわざ京都まで出かけるきっかけになったのが、この浄
瑠璃寺の大日如来だ。慶派の大日如来としては、運慶の円成寺大日如来像があまりにも有名だが、浄瑠璃寺の大日如来は運慶の父康慶の周辺で作成されたと推察される仏像だ。円成寺に比べて、肘の張りなども穏やかで大胆さというよりおとなしい印象を持つ。話によると「せんとくん」の生みの親芸大教授の藪内氏が修復を担当したという。お寺でもめったに見れない大日如来に今回の展覧会で出会えたのは収穫だった。

2014年5月1日木曜日

南山城の古寺巡礼展①

本日「南山城の古寺巡礼展」を見に京都国立博物館まで出かけた。このゴールデンウイークは京都非公開文化財特別公開も開催されており、午前中博物館、午後お寺巡りというコースで計画をたてた。 京都国立博物館ははじめて入るが重厚な造りで趣がある。浄瑠璃寺の大日如来など見るべき展示品があったが、なんと言っても圧巻なのは、禅定寺の十一面観音と寿宝寺の千手観音の巨像のコーナーで迫力がある。中でも千手観音が素晴らしかった。興奮冷めやらぬまま会場を後にした。