広隆寺弥勒菩薩に再会する
祇園の親子丼屋を出た後、バスと地下鉄・嵐電を乗り継いで太秦の広隆寺についた。ここ広隆寺は聖徳太子七箇寺のひとつで、創建は600年代と京都で一番古いお寺だ。ここの半跏思惟の弥勒菩薩は有名で同じ半跏思惟の中宮寺如意輪観音より古い仏像だ。ここのお寺は渡来人の秦氏の支配地域にあたり、聖徳太子から下げ渡された仏像を祀るため寺を建立したとか、朝鮮半島新羅からの仏像を祀ったとも伝えられている。まるい台座に腰をおろし、左足を下げ右足をその上に組み、右ひじをつくようなこの形は、ほかの仏像と違って、いかにもゆったりと、リラックスした姿だ。瞑想にふけほそく見開いて、伏し目につくる眼はエラガンスに切れ長く、眉は大きくゆったりとした弧を描き、鼻すじは細く通って高く、唇は小さくまとめられその両端をきゅっと引き締め、頬の肉付きは柔らかくまるく、清楚で、頬に触れる指も細くしなやかなカーブを描き、静かに引き込まれるような神秘的な美しさがある。実は私もこの仏像に恋をした一人だが、今から12年前は霊宝館の窓はすべて閉まっていて照明の効果で魅力を感じたが、今回は感染症対策で入場も制限され、すべて窓が開け放たれた状態での拝観となった。夜に恋した美女が昼間会うとたいしたことなかったに近い状態だった。仏像との距離も以前より遠く感じられた。泣き弥勒やほかの見るべき仏像が多い広隆寺なので足早に見て予定を変更して嵐山に向かった。
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