三重の仏像2026⑥(松阪薬師寺薬師如来)
三重の仏像で最後にご紹介するのが、松阪薬師寺の薬師如来だ。近鉄松阪駅からタクシーで薬師寺に向かうと現場は修復中で電話で住職の許可を得てお堂のなかに入った。中には薬師三尊や四天王・十二神将と多くの仏がおられた。薄暗がりの中、目が慣れてくると、図録「三重の仏像」で掲載された三重県指定文化財の平安時代後期の薬師如来に出会うことができた。薬師寺の本尊で右手は施無畏印を結び、左手は膝上において薬壺を執る像高83センチの一木造。衲衣を偏袒右肩に着し、左右を上に結跏趺坐する通有の姿につくる。体幹部他はヒノキの一材から彫り出し、これに右肘先、膝前材、その他若干の材を矧ぎ寄せる。後頭部と背部の二カ所から内矧を施すが、内矧は相通じず、また背面の内矧は地付に達する。後頭部は一材、背部は上下二材からなる背板を当てる。右耳、両手、薬壺、両足一部に彫り直しが認められる。全体に量感に満ちた、重厚な印象が感じられ、圧倒的な迫力を持って迫ってくるような、実際の大きさ以上の印象を与える仏像だ。衣文も太く粘りのある線で構成され、特に左半身の脇から上膊にかけて見られるロープを二つ折りにしたような衣文表現は本像の造形的な特徴となっている。製作時期は10世紀前半としたが、やや遡る可能性も考えられる。伝来については不明だが松阪で見るべき仏だと思う。
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