特別展「神仏の山 吉野・大峯」④(勝手神社勝手明神)
2024年5月に吉野を訪ね桜本坊へ行く途中に勝手神社を通ったが、このように素晴らしい神像があるとは知らなかった。今回初公開の勝手神社勝手明神は鎌倉時代の快慶派仏師慶観の作。図録には現存する五体と平成13年の火災で焼失した8体の写真も公開されており悔やまれる。ヒノキとみられる針葉樹の割矧ぎ造りで、両腕や両脚部以下に別材を矧いでおり、兜を別にかぶせる点、両腕を蟻枘で接合する点に特色がある。表面は全身に布貼りした上に、彩色と截金を交えて多様な文様がほどこされる。持物の刀は茎(なかご)「刀身の柄に入った部分」に『備前長船守元』の刻銘があり、同銘の類品から十四世紀末ころの作とみられる。武神にふさわしい精悍な顔だちで、勇壮な姿には神威が感じられる。承久の乱の前を前に後鳥羽上皇が1206年からほぼ毎年武具類を奉納したという記録から山口学芸員は1210年代あたりに造立の契機があったと考えたいとのこと。鎌倉幕府にも知れないで密かに神社に秘されていたことは興味深く、後醍醐天皇が吉野朝を開いた意味も納得できる。秘された歴史を感じながら次の作品に向かった。
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