みちのくの仏像展③成島毘沙門堂の吉祥天
今回の「みちのくの仏像展」で多くの仏像と再会をはたすが、この岩手県成島毘沙門堂の吉祥天にも6年ぶりに会うことができた。平成21年に毘沙門堂を訪問した際はただただ兜跋(とばつ)毘沙門天の大きさに圧倒されて、脇侍の吉祥天が印象にのこらならかった。その後、2012年に発売された別冊太陽「みちのくの仏像」の表紙をこの吉祥天が飾り、がぜん注目するようになった。今回会場のほぼ中央に静かに立っている吉祥天と対峙したが、あらためて美しいと感じた。頭冠に二頭の象を乗せている姿は他の吉祥天にはなく、本当の尊名は不詳とのことだ。だが、名前などどうでもよかった。彩色が落ち、薄オレンジの木目が鮮やかに浮き出たその仏像は、見るもの目をおだやかに引きつけていた。腰周りは少し太めで、胸をあらわにはだけているのだが、なぜかエロティックさが抑えられている優しく閉じた目から受ける印象も、不思議に官能から遠い。私は会場を回りながら、何度も吉祥天の前に戻りあくことなく眺めていた。
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