高野山の名宝展⑤
高野山の名宝展最後を飾るのは運慶の八大童子だ。普段、高野山霊宝館でも
一同に拝観できない八大童子だが、この展覧会ではなんと10年ぶりに一同に会するとのこと。空間デザイナー池田氏の演出によりひとつひとつの童子が迫ってくる感じを覚えた。山本勉先生も「運慶-リアルを超えた天才仏師」の中でで答えているが、真摯な中にどこかきょとんとしたあどけなさの残る矜羯羅(こんがら)童子、素直そうで気品のある制吨迦(せいたか)童子、翳りを帯びてエキセントリックな恵光(えこう)童子など表情から性格まで読み取れる運慶の技術に舌をまいた。この八大童子で私は運慶全作品31体すべて出会えたこととなる。静岡の願成就院にはじまり、逗子浄楽寺の阿弥陀三尊、奈良円成寺の大日如来や、京都の六波羅蜜寺の地蔵菩薩などひとつひとつが個性があり他にはない仏像だった。時にはバスの本数が少ない愛知県のお寺にでむくなどいい思い出になった。ところが昨年発売された山本勉先生執筆の「日本美術全集」によると、浄瑠璃寺伝来の十二神将や興福寺南円堂の四天王も運慶作品と考えられるとのこと。まだまだ運慶作品を求める旅はおわりそうにない。まだ見ぬ運慶作品をとの出会いを夢見ながら会場をあとにした。
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