康円の愛染明王
昨年の東博特別展示「運慶周辺と康円の仏像」でこの神護寺の愛染明王(あい
ぜんみょうおう)を見た。康円は運慶の孫弟子にあたる仏師で、たった10日間でこの仏像を製作したという。台座に墨で書かれているという。像高は40センチと小像だが、驚くべき制作の速さと出来栄えで迫力がある。憤怒の表情や細工の精密さに舌を巻く。愛染明王とは愛欲の力を悟りへと昇華させる仏で、庶民から恋愛成就の仏様として信仰があつい仏像だ。恋愛成就というと西洋のキューピットを思い浮かべるが、姿かたちはまったく違うものの、両方とも弓矢を持っているのが興味深い。以前山梨で天弓愛染明王という天に向って矢をつがえる仏像を見たが、この作品は6本の手に弓と矢、仏具や花を持ち実にバランスがよい。今年は本館彫刻のコーナーに展示されているので、スポットライトと蛍光灯の微妙なライティングで光る愛染明王を期待している。
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