空海のみほとけたち④(獅子窟寺の薬師如来)
今回の「空海と密教美術展」で急遽出展が決まったのが大阪河内の獅子窟寺・薬師如来だ。大阪夏の陣であやうく戦火で消失するところを僧侶が背負ってあやうく難を逃れた平安時代の仏像だ。獅子窟とは寺院の裏山にある獅子の口に似た岩山のことでかの弘法大師空海もそこで修行をしたといういわれがある。すこし面長であるが頬はふくよかで、端正な顔つき。目尻が長く、眉は太く盛り上がっている。目鼻たちがよく上唇の曲線や口元を深めに窪ませる表現が美しい。端正な顔とともに本像の特徴は流れるように表現される翻波式衣文(ほんぱしきえもん)だ。まるい襞(ひだ)と稜のある襞を交互に刻んでいる。どっしりとした安定感のある薬師如来は右手を施無畏印(せむいいん)、腕前で宝珠をとる。獅子窟寺では光背があり化仏がついた豪勢な仏像だが、本展では光背なしの展示のため魅力が半減すると感じた。改めて獅子窟寺を訪ねたいと感じた。
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