2025年3月20日木曜日

特別展「ハッケン!上田の仏像」③(神畑薬師堂の薬師如来)


 特別展「ハッケン!上田の仏像」のポスターやパンフレットに大きく掲載されていたのがこの神畑薬師堂の薬師如来だ。会場で見て驚いた。像高59センチ弱平安時代の小さな仏像だった。小さいながらもとても珍しい薬師如来で吉祥天などの天部の姿をした「吉祥薬師」と呼ばれる特異な姿であらわされた上田市最古の木彫像で平安時代の作だ。唐風の服に絡腋を着け、左手を少し下げて薬壺をとる。ヒノキの一材より掘り出し内刳なし。両手先、両足を矧ぐ神畑薬師の本尊だ。寺の記録によれば、寺より東南にある薬師台の山の中にあり、雨乞いや疱瘡除けの薬師如来として信仰があった。この種の天部形の薬師如来は広隆寺などの例があり、本像の鉢の広がった大きめな頭部、丸い頭頂部と髻や屈曲する幅広な天冠台は特徴的で、類例は少ないが九州や松代の清水寺聖観音などの例があり九世紀の余風を残した十世紀前半ごろの作と考えるのが妥当であろう。ハッケンしてすぐ上田市指定文化財に指定された、展覧会を象徴する仏像だった。






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