2020年4月13日月曜日

特別展「毘沙門天」⑥(高尾地蔵堂毘沙門天)

私が特別展鑑賞前に行っているのだが、博物館発行の「博物館ニュース・博物館だより」などの刊行物をウェブで確認してからでかけている。毘沙門天展では「奈良国立博物館だより112号」に上席研究員の岩田氏のコラムがあり、毘沙門天への思い入れがよくわかって読み応えがあった。それによると毘沙門天像を博物館への収蔵に携わる機会を得たとのこと。奈良博所蔵の毘沙門天像は石清水八幡宮多宝塔にあった毘沙門天が廃仏毀釈で市中に流れたものを奈良博で購入したり、四国愛媛の仏像調査に従事し如法寺の奈良時代にさかのぼる毘沙門天に出会った思い出は鮮烈だと書かれている。中でも思い入れが強いと感じたのが、高尾地蔵堂毘沙門天で岩田氏が「甲賀市史」の執筆に関わったとき鈴鹿山麓の集落に守られていた高尾地蔵堂毘沙門天との出会いがあったとのこと。手先などを失い、後世に施された彩色が浮き上がり、剥落が進むばかりか、足元の邪鬼はバラバラになっていたと書かれている。奈良博に寄託され往時の見事な姿が甦った。院政期に京都で活躍した円派又は院派仏師の作とのこと。忿怒の相が誇張されていない作風のため余り印象が強くなかったが、今この姿でわれわれの目を楽しませてくれることが奇跡だと思った。昨年も奈良博で購入した毘沙門天がありまだまだ名作の毘沙門天が日本中に埋もれていると感じた。

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