特別展 出雲と大和④(大安寺の多聞天)
東博臨時休館のあおりで会期途中で終了してしまった特別展「出雲と大和」
だが、みるべき仏像が多く展示されていた。大安寺の多聞天もその一つで像高140センチあまりの奈良時代の仏像だ。大安寺は舒明天皇勅願の7世紀に建立された天皇の寺第一号の百済大寺(くだらおおでら)で、高市大寺・大官大寺と所在と名称を変え平城遷都に伴い現在地に移された寺院だ。遷都1300年の春、奈良を訪れたとき大安寺を訪問したがお寺の説明では中国やインドの僧が数多く活躍した国際色豊かなお寺だったとのこと。本像も天平後期における新たな唐代彫刻の影響により造立された。図録によると大安寺に伝わる木造四天王の一つで最も作風が優れていると評価される仏像だ。兜をかぶり、目を怒らせ上歯で下唇を噛み忿怒の相を示す。忿怒の表情に伴い隆起した筋肉を的確に表され、右手を挙げ、左手を腰にあてて右足を挙げ岩座を踏む姿に動きがみられる。甲に唐草文や宝相華文(ほうそうげもん)などの文様を浮彫状に表す装飾性に富む仏像だ。10年ぶりに大安寺で最も印象に残った仏像に再会してじっく鑑賞していたかったが、出雲の四天王も気になるので次の展示に向かった。
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