静岡市歴史博物館開催の企画展「しずおかの古仏たち」の展示品は一階のスペースにある静岡市清水区にある霊山寺の金剛力士阿形・吽形からだ。霊山寺は清水平野と駿河湾を見渡す山の中腹にある寺院で奈良時代の僧行基が観音菩薩を納めた駿河七観音の一つで、平安時代中期の千手観音が本尊。仁王門に平安時代~鎌倉時代製作と考えられる金剛力士を吉備文化財修復所が令和5年度から3年かけ修理し、お寺に返還する前に本展にての披露となった。会場には修理前の金剛力士の写真から霊山寺から埼玉に修理の移設の様子。修復の過程がパネルにてわかりやすく展示してあった。特に注目したのが近代以降にガラス製の玉眼が嵌められていたため、本来の彫眼に復元する過程で、それによって金剛力士の迫力が増していた。修理当初は自立するのが難しい脚も木材の補強により力強くなり立派になっていた。修理の過程で金剛力士は頭から体が一本の材で彫り出されており、内刳の手法を用いてない平安時代の一木造に多い製作方法とのこと。衣の下からは像の輪郭が浮き上がり、立体感がある鎌倉時代以降の新しい造形彫刻になっている。吉備文化財修復所のいい仕事に感銘して会場に向かった。