祝国宝 「大報恩寺六観音・地蔵菩薩」
今年の国宝彫刻の部は京都・大報恩寺の六観音・地蔵菩薩が指定された。この六観音と快慶の十大弟子、行快の釈迦如来を何度も京都や上野の展覧会でも出会った。見るたびに感動した仏像群だが、六観音がまだ国宝になっていないのは驚きだった。文化庁の解説によると「准胝観音像の銘文に名が記される肥後定慶を統率者として六人の仏師により造られたとみられる六観音で、像内銘や納入品から貞応3年(1224年)に制作されたことが判明する。克明な写実を踏まえて情感に富んだ菩薩像の様式を造りだし、鎌倉時代彫刻の一つの到達点を示した仏師として、運慶次世代の中で最も注目されている定慶の代表作であり、当代の壇像彫刻の代表的な遺品である」と肥後定慶をほめちぎっている。山本先生の「鎌倉時代仏師列伝」によると私は各地で肥後定慶作品に出逢っていることがわかった。京都では大報恩寺像と鞍馬寺の聖観音、岐阜県では横倉寺の金剛力士像、鎌倉で明王院不動明王と展覧会で鎌倉常楽寺阿弥陀三尊と多い。山本先生によると大報恩寺准胝観音は「運慶が完成した興福寺北円堂弥勒仏に通ずる。しかし、髪筋の一部を天冠台に配した花形飾りの中心の孔に通すなどの細工をした髪型や、やや複雑で変化にとんだ衣文の形は古代の壇像彫刻の一部をとりこんだと思われるが、独特のはなやぎがある。」それから肥後定慶はよく言われる運慶の息子ではなく、運慶風を基本としたが古代壇像彫刻も作風に取り入れられた独立した仏師だと結論ずけている。とにかく国宝指定はめでたいことだ。まだ文化庁より令和六年度国宝・重文展の発表はないが、大報恩寺の出展があるかどうかが注目されるだろう。
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