2012年5月27日日曜日
2012年5月19日土曜日
ボストン美術館展で謎多き仏師円慶の地蔵菩薩に出会う
ボストン美術館展で初めて円慶という仏師の地蔵菩薩を見た。円慶とは聞きなれない仏師の名だが、図録などをみるとどうやら慶派の仏師で、主に地方で活躍したとのこと。本作品は九州福岡にあったお寺で開眼供養された仏像だという。地蔵菩薩というとこの秋「鎌倉国宝館」の展覧会に出品される静岡瑞林寺の運慶父康慶の手による地蔵菩薩を思い出す。半跏趺坐(はんかふざ)する姿や手の運びなどが似ているとのことだが、全体の印象は康慶の地蔵菩薩ほど明るい雰囲気ではなく、円慶が生きた南北朝時代を反映している。しかしながら優れた作品であることは、その神秘的な雰囲気からもわかる。ボストン美術館展で出会った印象的な作品であることは間違いない。他の作品も見たい衝動にかられて会場をあとにした。
2012年5月12日土曜日
曹源寺の十二神将
このたびの新指定・国宝・重要文化財のなかには、仏像クラブの面々におなじみの横須賀曹源寺の十二神将が含まれている。運慶研究家の山本勉氏も注目しているのが十二神将の中の巳神でひとつだけ他の作品と趣がことなる。頬や下あごの張りを強調した勇ましい顔つきが、静岡願成就院の毘沙門天像に通じるといわれている。今回の展覧会ではその巳神を中心にして回りに他の十二神将を配する展示となっている。U案内人と見るたびに運慶の作品ではないかと熱く語り合った仏像が重要文化財に指定されたのは喜ばしいことだ。曹源寺は三浦氏の伝説が残る「満願寺」にも程近く、運慶及び慶派仏師とそれを庇護した三浦氏との関係が思いおこされる。効果的にライトアップされた十二神将を堪能してから東博本館をあとにした。
2012年5月6日日曜日
ボストン美術館展で神像のような仏像に出会う
ボストン美術館展で快慶の「弥勒菩薩立像」を見たあとこの仏像に出会った。一見してギリシャ彫刻の神像のように見えた。図録には唐招提寺の八世紀後半に造られた「伝薬師如来立像」や「伝獅子吼菩薩立像」を思いおこされるとある。たしかにほほの下膨れな感じなどが似ておりどこか大陸的な雰囲気を感じさせる仏像なので、ギリシャ彫刻のように見えたのだろう。小さめな頭部、腰高な長身、腰をひねる姿勢、さらに下半身につける裙(くん)のすその短い表現からは軽やかさを感じさせる。衣の表現もたくみで装飾性にとんでいおり、土門拳が絶賛してやまない神護寺の薬師如来に通じる壇像彫刻を取り入れていると思われる。頭部と体は一材から彫りだされている一木造りで、残念なことに足先はきられているが、穏やかな表情が魅力的な仏像だ。仏像の姿を目に焼き付けて会場をあとにした。
2012年5月5日土曜日
快慶作「深沙大将」に東博本館で再会する
ボストン美術館展を見終わったあと、本館の新指定国宝・重要文化財の仏像が展示してある一階彫刻のコーナーに向かった。今年度に新たに指定された重要文化財の中に昨年の夏、高野山霊宝館で見た「深沙大将(じんじゃたいしょう)」がわざわざ高野山より上野の東博にお出ましになっているとのこと。私が見た後、「深沙大将」と同時期に作られた「執金剛神」の足裏より快慶の文字が発見されたことにより、めでたく新指定の運びとなった。改めて東博のガラスケースの中にある「深沙大将」を見たがすばらしいの一言につきる。「深沙大将」は西遊記の沙悟浄(さごじょう)のことで、三蔵法師を六度食らったが、七度目に改心し、弟子になったと伝えられている。本像も首の周りに三蔵法師の髑髏(どくろ)の首飾りをつけ、腹に人面を表した異様な姿がグットくる。脛当には象が二匹おり、見るものを圧倒する。快慶の美しい金泥塗(きんでいぬり)の弥勒菩薩を見たあとなので、同じ作者の仏像なのかと疑ってしまうほどの迫力だった。改めて快慶の力量に圧倒された。
2012年5月3日木曜日
ボストン美術館展で快慶弥勒菩薩に出会う
本日、上野の東博で開催されている特別展ボストン美術館日本美術の至宝を見に行った。目的は京都の醍醐寺や兵庫浄土寺で私に感動を与えた、仏師快慶の処女作「弥勒菩薩立像」に出会うためだ。会場はGWで混雑しているのか心配したがさほどのことはなく余裕を持って鑑賞できた。最初は「仏のかたち神のすがた」のコーナーで平安・鎌倉の仏画を中心とした展示となっている。なかでも馬頭観音図の素晴らしさに圧倒された。後半にお目当ての快慶の弥勒菩薩立像が展示してあった。照明のせいか写真でみるほど派手な金色ではなく落ち着いた快慶らしい作品となっている。目じりの切れ上がった快慶特有の端正な表情がすでに見られる。像内納入品も展示されており奥書に「仏師快慶」の字がはっきり見えた。これ以後快慶は重源の影響もあり「アン阿弥陀仏」と著名することになるのでこの著名は貴重だ。奥書には亡くなった父母たちへの供養でこの弥勒菩薩がつくられたとある。若いはつらつとした快慶の気負いなどが感じさせられる素晴らしい作品だ。普段遠い異国の地にある仏像と東京で出会えたことを感謝しつついつまでも見ていたい衝動にかられた。本館でも新指定国宝・重文の仏像が特別展示されているので足早に会場を後にした。
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