2014年6月28日土曜日

南山城の古寺巡礼展⑥

今回の「南山城の古寺巡礼」展ではお寺の秘仏が公開されており、中には
1年に一日しか公開されない仏像もある。ここにあげる笠置寺の毘沙門天も秘仏でお寺では普段拝観できない仏像だ。笠置寺は鎌倉時代高僧「解脱上人定慶」にかかわりのある寺院で、県立金沢文庫で開催された「解脱上人定慶」展において、金沢文庫の瀬谷学芸員が今回も出展されている笠置寺曼荼羅図の前で盛んに語っていた寺院だ。この毘沙門天も力強く写実的な作風から鎌倉時代に慶派によって製作されたという。踏まれている邪鬼もとてもユーモラスで、小さくまとまっているのが特徴だ。今後出会うことはないであろう仏像を前にして立ち去りがたい思いを胸にして会場をあとにした。

2014年6月21日土曜日

薬師寺の地蔵菩薩

法隆寺展に物足りなさを感じた私は、その足で東博本館の仏像コーナーが
ある11室に向った。そこで思いがけず地蔵菩薩と再会した。平成24年に県立金沢文庫で開催された「解脱上人貞慶展」で出会った薬師寺の地蔵菩薩だった。東博の11室では入り口から入ったすぐ近くの360度ガラス張りのガラスケースに展示の目玉となる仏像が展示される場合が多いが、今回は薬師寺の地蔵菩薩だった。雲の上の蓮華座(れんげざ)に立ち、左手に宝珠、右手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、腰をかがめて歩む姿の地蔵菩薩。その像内には造立願文が納められており、仏師善円(ぜんえん)が造った像とわかる。金沢文庫で見たときは光背がなく展示されていたが、今回は放射線状の光背がついており一目では、以前出会った仏像とは思わなかった。私は再会した仏像を始めて出会ったと感じながら飽くことなくながめて、次の展示へと向った。


2014年6月15日日曜日

南山城の古寺巡礼展⑤

以前、南山城を訪れたとき時間がなく参拝を断念したのが、「神童寺」だ。今
回の展覧会では不動明王・愛染明王・日光・月光菩薩と、4体もの仏像が出展されるという。「南山城の古寺」のコーナーで寿宝寺の千手観音と禅定寺の十一面観音に圧倒されたあと神童寺のコーナーとなってをり、じっくりと鑑賞できた。なかでも気に入ったのがこの「波切白不動尊」と呼ばれる不動明王だ。直立の姿勢と、頭髪が巻髪で不動明王によくみられる弁髪(べんぱつ)を表さず、上唇で下唇を噛む顔つきは、園城寺の黄不動画像に通じるという。神童寺は「北吉野山」という山号が表すように、修験道の流れをくむ寺で、南山城の古寺の中では他の寺とは一線を画す雰囲気が展示品からも伺えた。いつかお寺を訪れようと思い京博を後にした。

2014年6月7日土曜日

法隆寺展

今週の日曜日に上野の東京藝術大学美術館で開催されている「法隆寺展」
に出かけた。法隆寺金堂内に安置されている平安時代の国宝毘沙門天・吉祥天を初めとした多くの寺宝70件が一同に会する20年ぶりの大規模な法隆寺展とのふれこみだった。会場は思ったより人が少なく、静かな環境で見ることができた。法隆寺と東京美術学校のコーナーを抜けると、毘沙門天・吉祥天の展示スペースとなっている。毘沙門天・吉祥天は平安時代後期の優作だが保存状態がよく、当初の彩色や切金がよく残っていた。3Fへエレベーターで進むと、法隆寺の仏像の展示コーナーだった。法隆寺の仏像といえば、金堂にある釈迦三尊や百済観音が余にも有名だが、今回の展示では、くろうと受けする仏像が多かった。お馴染みの菩薩立像や法隆寺西円堂の薬師如来の胎内仏までめずらしい仏像が多かった。中でも私が眼をひいたのが、西円堂の薬師如来の胎内仏だ。藝大の別棟の展示会場では別品の祈り展という法隆寺壁画をCGと映像で表現した展示もありそれを見てから藝大を後にした。