快慶展⑯「東大寺の地蔵菩薩」
2017年5月に奈良博で開催された特別展「快慶」で東大寺の地蔵菩薩に再会した。この仏像を初めてみたのが2010年に開催された東大寺大仏展だ。大仏が出品されないのに上野で奈良大仏をテーマにしたユニークな展覧会だが、そこにひっそりと快慶の東大寺阿弥陀如来とこの地蔵菩薩が展示されていた。友人が台座の美しさに思わず声をあげたことを思い出したが、奈良博山口学芸員の図録解説によると後補でもとは湧雲上の台座であったという。製作年代は師匠の重源がなくなる前後の法橋時代だ。切れ長の眼を持ち秀麗な顔立ちや整理のゆきとどいた衣の表現は、快慶が追及した形式の美の極致をしめし、腰をわずかに左にひねり、右足を前方に出す立ち姿と、それに呼応してゆらめく着衣とが、地蔵来迎の現実感をより確かにものにしている。ここに形式的整理と写実的な表現とが見事に融合した、快慶様式の完成をみることができると山口学芸員も大絶賛の仏像だ。また機会があれば出会いたい仏像のひとつだ。
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