特別展「大安寺のすべて」⑪(行教律師像)
大安寺釈迦如来像をめぐる世界のあと、大安寺をめぐる人々と信仰と題し大安寺に関わった菩提僊那や空海などのお坊さんの展示のコーナーにこの行教律師像があった。行教律師は宇佐神宮から八幡神を招いて京都に石清水八幡宮を立てた坊さんでこの像は石清水八幡宮の麓にある神応寺に祀られている。奈良博研究員N藤氏はきわめて個性的と解説しているが、古佛の井上氏にかかると抜きんでて尋常でない表現を感じさせる像だという。井上氏によると「歪みの造形が目に付く。座形は左へ大きく傾き、肩は右上がりで、腰の重心と頭頂とが大幅にずれている。頭部、体部および足膝の向きが少しづつ異なり、この部分どうしがぎこちなく一種武骨な感じで全体をなす様子は苦悶に近い感じがする。」N籐研究員も目や鼻・唇の異常さには気づいていたが「独特の迫力があり」という記述にとどまっていた。井上氏は男山地主神の像で行基製作という結論に達したようだが、N籐研究員は僧形八幡神として祀られた像という可能性を指摘するにとどめている。実際の仏像も隣の絵画と見比べると行教のものとは思えない不思議な仏像だった。
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