2022年7月16日土曜日

特別展「大安寺のすべて」⑩(四天王のうち持国天)

大安寺に伝わる四天王は作風の相違から当初の組み合わせとはみなしがたいものの、いずれもカヤとみられる針葉樹の一材から彫りだす構造で、重厚な体つきや各所に文様を彫りだす点も共通性がある。大安寺の菩薩像と同じく後補部が多く伝持国天・伝増長天は肩より先、他の四天王も後補であるため手の構えが当初とは異なり、現在の名称も入れ替わっている可能性が考えられる。ニコニコ美術館でN藤研究員もっともすぐれた出来栄えが多聞天と言っていたが、確かにそうだと感じた。だがそこが写真家のみせどころで、あえて駄作という印象の持国天をすばらしくみせている。持国天は四天王のうち最も像高が高く頭髪の毛筋彫りや腰にベルト状の帯を回すなど他の四天王との差異が目立つ。伝広目天のポーヅから東大寺戒壇院厨子の神将像と同じ鞘裁きから早良親王のもと大安寺の復興がなされた8世紀までさかのぼる説がある。謎に満ちた四天王だった。
 

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