特別展「横浜の仏像」⑫(東漸寺薬師如来)
山本館長の講演も佳境でいよいよ「運慶仏の時代」に入った。「横浜の仏像」展では運慶の作品である金沢文庫所蔵の光明院大威徳明王は出展されず、運慶周辺の仏師の作が並んでいた。山本館長が最初に紹介したのが磯子区杉田の東漸寺薬師如来で像高85センチ余りの堂々した体躯、鎌倉時代寄木造り玉眼の仏像だ。とても穏やかな顔立ちで像内銘記から仏師は特定できないが山本館長によるとそこかしこに運慶に影響された痕跡を持つ薬師如来だ。まず注目したのが後頭部の螺髪で運慶の彫り方として逆V字型をあげ、願成就院阿弥陀如来と比較した平安時代の仏像と明らかに違う特徴をあげた。みほとけチャンネルで山本館長があげたのが衣文の折り返しで浄楽寺阿弥陀如来で運慶が始めた特徴だという。運慶仏のもうひとつの特徴が浄楽寺像に見られる「上げ底式内刳り」だがこの像では採用されず古風なままだ。運慶に極めて近いながら古風な仏像をつくる仏師から関東で活躍した宗慶や実慶が想起されるが山本館長は仏師を特定していなかった。いっきに運慶仏の時代に引き込まれる仏像だった。
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